毎日大量の迷惑メールが届きますが、迷惑メールフォルダの中に必要なメールが紛れてしまうことも多々あるため、一応チェックしてから削除しています。

その際、ざっと件名を見ることで、必要なメールかどうかを判断しているのですが、それを毎日繰り返していると、


「迷惑メールの方が件名に工夫が見られる」


と思うようになりました。


仕事で必要なメールでも、件名から全く要件がわからないメールも散見します。

件名というのはメールの顔ですし、後から検索する際には手がかりにもなるものです。

迷惑メールを送りつけてくることはもちろん感心しませんが、彼らはなんとか中身を読ませるために、あの手この手で件名に誘惑文言を入れてきます。


勿論、あまり品のない表現がほとんどなので、実例を挙げたりはしませんが、迷惑メールからも学ぶことはあるなとふと考えてしまいました。

先日、事務所に以前私が弁護人を担当した元被疑者・元被告人・元受刑者から電話がありました。

彼は、逮捕の翌日に私が当番弁護士として接見したときは、本当にどうしようもない若者でした。
かなりの重大犯罪を犯していたのですが、それを反省するよりも、捜査機関による自分の扱いの悪さにひたすら文句を言うばかりでした。
確かに、捜査機関の側にもかなりの問題があったので、毎日接見し、弁護人面前調書を作成し、取調べ担当者に直談判したり、警察署と検察庁に丁重なるお手紙を送ったりしました。
そんな弁護人活動をしているうちに、私が彼の味方だと認識してくれたのか、「反省」ってどういうことだろうと一緒に考えることができるようになりました。
犯罪事実が多岐に渡ったため、追起訴が続き、付き合いは長くなりました。
その間に、歳が若かったせいか、随分と成長を見せてくれました。
公判当日の被告人質問の態度は、犯行時とは別人のようでした。
少なくとも、私の目からは真摯に反省しているように見えましたが、残念ながら実刑判決が下されました。
私は心配だったので、刑務所まで面会に行ったのですが、彼は憑き物が取れたようにスッキリとした顔をしていて安心しました。

それから数年後、彼から事務所に電話がありました。
仮出所の報告でした。
泣きながら、「これから頑張ります」と誓ってくれました。
ただでさえ不景気で就職難の時代に、所謂前科者がどれほど苦労するかというのは、きっと想像を絶するものがあったと思います。
しかし、彼はその後もくじけずに頑張り、毎年年賀状で近況報告をしてくれていました。
仕事が決まったときも報告の電話をくれました。

そんな彼から、今年は年賀状が届きませんでした。
心配になりましたが、住所しかわからなかったので、こちらからは年賀状を送っただけでした。

そんな彼からの先日の電話は、遂に自分の会社を設立したという報告でした。
年末年始は引越しと会社設立準備でドタバタしていて年賀状が出せなかったが、私からの年賀状は届いていたようです。

まだまだ今後も困難に直面することと思いますが、彼なら逞しく乗り越えていけるような気がします。

彼を見ていると、刑事弁護の役割について考えさせられます。
重大犯罪を繰り返したとはいえ、初犯で実刑判決が下されましたから、普通に見れば弁護は失敗したという評価を受けるかもしれません。

しかし、彼の目覚ましい更生ぶりを見ていると、弁護活動の評価というものはそんなに単純なものではないと思うようになりました。
彼と一緒に、「反省」とは何かを一緒に真剣に考えた日々は決して無駄ではなかったと思います。

これからも、彼の成長を楽しみにするとともに、自分ももっと成長していこうと思います。
被災者の方々からの無料法律相談をお受けします。阪神淡路大震災以来、被災者救済の法制度はかなり整備されていて、ほとんどの問題は各市区町村区役所に相談すれば解決するはずです。それでもダメな場合は、どうぞお気軽にご相談下さい。弁護士 高木良平(第二東京弁護士会所属)