本日紹介したい本は、「ひそやかな花園」。
角田光代さんの長編小説です。
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幼き日に、夏のキャンプで出会った7人の一人っ子達と、その親達の成長の物語。
ある出生上の秘密の共通点を持った子供たちは、数年間の夏を共にキャンプで過ごした。
キャンプがなくなった後は、親の意図により、互いの消息を知らないまま成長し、大人になり、それぞれの人生を生きている。心のどこかに、キャンプの鮮烈な思い出を無意識に秘めたまま、挫折、諦観、葛藤、不安、焦り、希望…それぞれに満ちた生活を送っていた。
数々の偶然、必然を経て再会した彼らは、自分達の出生の秘密、親への思いと向き合いながら、苦しみながらも、強く成長していく。
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父親になる人のドナーについて、当時の若かった樹里の両親は、生まれてくる子供の為を思い、できるだけ「良い条件のもの」を選んだつもりでいた。
しかし、子育てを経て、樹里の母が気付いた事は「生まれてくる子にあげられるものは、しあわせの保証っていうのは、そんな『条件』ではなかった。重要なのはそこじゃない。善きことは、その子が生まれてからじゃないと、与えられない。その子は私たちとは違う世界を生まれた時からもっていて、その世界では何が幸せか、わからないでしょう」という事。
小説を読み進めていた私は、樹里の母親のこの言葉こそが、親子関係の難しさであり、素晴らしさなんだろうと思った。
日頃、子供のためと思って、良かれと思ってしていることが、子供の幸せになるとは限らないという事。親の自己満足であり、子供の価値観を偏らせる原因になるかもしれないという事。
親子という閉ざされた世界で、ジャッジする第三者が居ないからこその、難しい世界。
でも、難しいからこそ、親は子の、子は親の生き方を理解し、尊重する事が出来た時は、素晴らしいのだと思う。