私はしがない女子高生で、普通の偏差値、部活内でも普通、友達も皆普通で、何も特別なところはありません。

友達は結実ちゃんといいます。普通とは言ったけど可愛い子で、同じバスケ部で、入部初日から自然と仲良くなりました。

ちなみに、結実というのは偽名です。インターネットなので、本名は上げません。当然ですね。

どうして最初に結実ちゃんの話をしたかというと、彼女が思ったより普通じゃないからです。

男友達のJ君が実は私を好きで(私は割りと最初から気付いてはいましたが、優しくしてくれるし気付かないフリをしていました)、そのことを結実ちゃんに相談したといったとき、結実ちゃんは彼の言葉を全部録音していて、昼休みに教室で、本人もいるのに普通の音量で流し始めたんです。

まず録音してるのがおかしいけど、大音量でも小音量でもなく、好きな音楽を適当にかけるみたいなノリで、J君が私が歩くときに音を立てないようにしてるんが好きとか、K君と同じで芸人の男性ブランコが好きで話してて楽しいとか、結実ちゃんがJ君に根掘り葉掘り聞いてるのを、流しちゃって。

クラスの皆は段々と気付いて、声が小さくなっていって、録音に集中していってました。もちろん、気付いてないフリというか、こっちは見ないで、でも耳を澄ませてるって感じの静かさ。そしたら、教室の入口で別クラスの友達と話してたJ君がある女子に肩を叩かれて何かを言われて、困惑しながら私達がいるところに来ました。

「どういうつもりだよ石田(結実ちゃんの仮名字)」

って。当然ですよね。結実ちゃんは、「聞いてて」って、J君に黙ってってジェスチャーして、J君も止めるか迷ったみたいでしたけど、頭を掻いて、音量だけ下げるように頼んでました。

結実ちゃんは私達3人には十分聞こえる程度に音量を下げて、そこで、ちょうど結実ちゃんがこう質問したんです。

「伝えたら?」

「でも、友情が壊れるのが嫌でなぁ。今の関係が。マキ(私の仮名前)は脈無しっぽいし。いや気付いてるんだろうけど。俺隠してないし」

「うーん。気付いてるよマキ。 うわー、でも私も…」

ここまで流して、J君が結実ちゃんからスマホを取って、音量を消しました。結実ちゃんは抵抗しませんでした。

「どういうつもりだよ」

「ここまで流したかったから」

普通の笑顔で言ってました。私も訊きました。J君は怒ってるみたいでしたから、「悪気はないんでしょ?」みたいなトーンで。

「いや、別に…」

結実ちゃんはそう言いました。

私達3人は普通によく遊ぶし、今まで喧嘩もしたことないし、お互いに不満を言い合える仲で、こんな嫌がらせをしなきゃいけない理由は全くわかりませんでした。でも、いつもの結実ちゃんなら話し合えるって分かってるから、また、何か嫌なことされたの?って訊きました。

「そういうわけじゃないんだけど…」

J君は怒りと困惑が混ざってるみたいでした。「何もしてないなら、なんでだよ?いや、何かしてたら言えよって感じだけど」

「だから、別に…」

私とJ君は怒りが沸々と、ってこともなくて、当の結実ちゃんと3人で困ってるみたいな顔して、気まずい間を開けながら、会話してました。

なんか、結実ちゃんは平謝りして、昼休みが終わりました。

その日の5、6限の休み時間は私とJ君が廊下で話して、どういうこと?って談義しました。

帰り道に、私が結実ちゃんに訊くことにしました。教室では言い難いことがあったのかも、と思ったからです。

「いや、ほんとに何でもなくて…ごめんね」

それが結実ちゃんの答えでした。結実ちゃん含め、修学旅行で仲が良いメンバーと人狼やったときに、ボロをだした結実ちゃんがそういえばこんな反応をしていたと思います。取り繕うみたいな。

私から言い出さなきゃ、と思って、「ごめん、結実がしたことは最低だと思う。J君にちゃんと謝るまで話したくない」

って、やっぱり困惑したまま言いました。許せないっていうか、最低だと思ったのは本当ですけど、気持ちはどちらかというと虚ろでした。

翌日、結実ちゃんはJ君に電話でちゃんと謝ったらしいです。結実ちゃんは、そもそも、人が嫌がることをしないし、してしまったらすぐに謝る子なので、それも結実ちゃんらしいんですけど、それだけに何か気味が悪かったです。

 

皆さんは、結実ちゃんは何がしたかったんだと思いますか?