卒塾生のことなのであまり具体的には書けないのですが、とても魅力的な男子高校生がいました。

その生徒は植物が大好きで、小学生の頃から、マンションのベランダで植物を育てていたり、土曜日や日曜日には山へ出掛けて行っては植物を観察していたそうです。

なかなかこういう生徒はいません。ちょっとさかなクンみたいですよね。

この男子生徒は成績がいいという感じの生徒ではありませんでした。高校も平均的な偏差値の学校にいっていました。高一くらいから通塾していたと思います。初めの頃はいろいろあったのですが、ある時から落ち着き始め、それ以後は淡々と勉強するという感じでした。

高3になって大学進学を考え始めた時、農学部一択という進路でした。やることは決まっていたんです。大学はどこにするのか学力と相談ということでしたが、夏休みなどにも大学のAO対象者の講座を受けたりしながら、希望の大学にAOで進学することになりました。お米を作る実習が楽しみだという話をしたいのをよく覚えています。

卒塾するときにお母さんから長い手紙をいただきました。具体的な内容はもう忘れてしまったんですが、推薦入試を否定的に考える風潮について言及がありました。それがすごく悲しいという話だったと記憶しています。確かにそういう風潮あるんですよね。そのなんというか聞こえない声が気になってしまうというようなことだったと思います。少し時間が経っているので、今は状況は少し変化しているかもしれません。

現在大学進学者のほぼ半分が推薦入試で決まっています。今の高校生の保護者の方が過ごしてきた時代から考えると信じられないことでしょう。過酷な入試を突破してきたことが自信につながっている方も多くいらっしゃると思います。

そういう私も推薦入試については否定的だったのです。理由はよくあるものです。学力が下がるとか、理系は大学に入ってから苦労するとか、そういうものでした。

ですが、この生徒に出会ってから推薦入試についての考えが変わりました。勉強したいという強い意志を持っていることはとても重要だということに改めて気づいたからです。

どんな科目でもできるとても優秀な生徒はあまり関係ないのです。なんでもできてしまうのですから。ですが、全てがそういう生徒ばかりではありません。何か一つでもやりたいことがあるという生徒がいたら、それを応援してあげたくなるものです。今は総合型選抜というのですが、入試の多様化によって、今までなら見つけられなかった才能が輝く可能性が増していると思っています。どんな制度にも問題はあるものです。ただ一つ言えることは大人が自分の自尊心を保つために制度の批判をすることはやめた方がいいということです。

さかなクンみたいな人が増えたら社会が魅力的になると思うんですよね。

ですから、推薦入試全然気にせず、活用しましょう、というお話でした。

 

ありがとうございました。