勝つことばかり知りて

 

負くること知らざれば

 

害 その身に至る

 

            (徳川家康 遺訓)

 

 

 

勝負の世界では、勝つために心血を注ぐ

それは、商売の世界でも同じである。

しかし、どの世界においても勝ち続けるという事は不可能である。

その事は、歴史を紐解けば、誰しも納得がいく。

 

よく、「負けて勝つ」という言葉がある。

この言葉は、勝負の世界に身を置かない者がいう

きれいごとかもしれない。

 

しかし、負けて勝つ、或いは引き分けにもっていくには

相手に対して実力が上の者にしか出来ない行為である。

心にゆとりがある精神の大きな人にしか出来ない事である。

 

私達は、人間関係において、この「負けて勝つ」という精神を

学ばなければならない。

 

仮に、相対する人を論破したからといっても、それは一時的なことで、

逆に要らぬ恨みを買うだけで、先々 何らかの局面で仕返しを受けるものである。

 

私達は、こちらが正しいと思うことが、相手にとって必ずしも正しい事ではないと

知るべきである。

 

仮に、こちらの正しいと思うことが相手に理解されない時は、相手は未だ

精神レベルが達していないんだと諦見し、精神レベルの上位の者が、

相手の土俵にあがらず、慈しみの心で接するのが賢明である。

 

そうすることで、その上位の者は、相手と自分の両者を救うことになり

争いは起こらない。

 

人間、だれしも未完成な生き者である。

完璧な人間はいない。

完璧ならば、人間として生を受けないのである。

 

だからこそ、「お互いさま」 だと覚って

互いを許しあい、認めあって生活したいものである。

 

負けることは、恥ずかしいことではない。

勝つことだけが、素晴らしいのではない。

 

 

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(長楽寺のホームページ)