警察官なんてなるもんじゃない。
公務員だからって色々言われるし、真夜中休日関わりなく突然呼び出されるし、仕事は過酷でアラフォーの身体にはめちゃくちゃきつい。
職場からの電話で家を飛び出すとそのまま一日帰って来れない日もある。
それでも子供のころからあこがれ続けた警察官と言う仕事を辞めるに至るにはまだこの仕事に失望していないのも事実で、今日もアラフォーの身体に鞭打って仕事に向かう。
「ただいまー」
終電で自宅に帰りついた私は小声で玄関を開け、周囲を見渡す。
もうみんな眠りについているらしく家はしんと水を打ったように静かだ。
リビングに微かな明かりがついているのに気づいてドアを開けると、置手紙が一つ。
『仕事お疲れ、夜ご飯としてごはんとチキンステーキ、おやつのショートケーキも食べずに行っちゃったから冷蔵庫に入れてあるよ。 瑞穂』
手書きの優しい文字にちょっとした落書きが優しく目に映る。
「こんな夜更けにショートケーキは太るなあ」
苦笑いしつつもその優しさが愛おしい。
ありがたいことにお腹は空いてるし、ぜんぶ食べられそうな気がする。
冷蔵庫のチキンステーキとごはんを温めながら思う。

こういうきつい仕事の後ほど、瑞穂さんの愛情は優しくしみわたるんだ。

夜更けのレンジがチンと鳴った。

秋絵ちゃんと瑞穂さんの夜更け