薬の副作用で太りだしてから漠然と周りから女の子として扱われなくなったと思う事が増えた。
親父さんと出逢ってからはシンプルに可愛い後輩として扱われ、仕事が貰えるようになってからは希望をちゃんと叶えて締め切りを守る良い放送作家として扱われた。

そして今、井澄からは。
「結婚したいなって思ってるよ」
絶賛結婚したい恋人扱いされている。

「すごいなあ、うちのちーは」
「だって可愛いじゃないですか」
「うん、真面目だしいい子だし才能もあるしね」
先輩相手に全力で惚気倒している井澄から隠れるようにテレビ局の社員食堂の間仕切りに身を隠した私は、割とマジで頭を抱えていた。
というか井澄の事務所的には井澄の性的嗜好は伏せたいようなのだが、私と付き合ってることを本人が全く隠せていないのでそのうち面倒なことにならないかと本気で心配している。
「でしょ?そこにあのふわふわボディもあるって最高じゃないですか」
誰かこのバカを止めろ!!!!!!!!と叫びだしたい衝動をグッと抑えながら水をがぶ飲みする。
というか先輩たちも何でそんな楽しそうに頷いてるんだ。惚気って世間的にはどうでも良いものじゃないのか。
「もう3年ぐらい経つけど智幸さんなら一生いても飽きないなーって最近ほんと思う」
「そりゃーうちの事務所の秘蔵っ子ですしね」
「親父さんのスカウトでもあるしな」
体形変化で人間不信&拒食に走りかけてた小6の私よ、聞いてるか。
お前にもこんなドストレートに褒め殺される日が来るんだぞ。
「ほんと、智幸さんって最高ですよね」
「そりゃあ俺たちのちーだしな」
「ちゃんと幸せにしてやってね」
「もちろんですよ」
……いっそ殺してくれ。





ただ書きたくなっただけの話