11月のとある土曜日の昼下がり、近所のコンビニで預かっていて貰っていたものを受け取ると寄り道することも無くまっすぐに我が家へと帰った。
そして静かに玄関を開けてリビングの前で呼吸を整えると、勢いよく飛び込んだ。
「どーも奥さぁーん!竹浪秋恵でございま「「誕生日おめでとう!!」」
顔面に食らったクラッカーの紙吹雪。
食卓の上には私の誕生日を祝う紫色と黄色のタルトが3切れづつ皿に乗っている。しかも焼き菓子やサンドウィッチがケーキスタンドに並び、お茶の準備まで奇麗になされている。
そのあまりによく出来たおもてなしに目を剥いた。
「英人さんよ、私の誕生日は明後日ですが?」
「明後日夜勤じゃん」
「まあそうだけどさ、きょう一番祝われるべきは私じゃなくて瑞穂さんでは?」
私も付き合いだしてから知ったが瑞穂さんと私の誕生日は3日しか変わらない。
そして今日は瑞穂さんの誕生日なのである。
「今年はめんどくさいからまとめて祝おうと思ったんだけど、せっかくだし黙っとこうかと思って」
なるほど、ドッキリサプライズということか。私も小さいころ何度かやったのでよく覚えてる。
だとしたらこれは無いほうがいいだろうかと思わず手元の箱のことを思い出す。
すると英人が目ざとく「なにこれ母さんへのプレゼント?」と聞いてくる。
「……瑞穂さんの誕生日祝いのお菓子。青森と福岡から取り寄せてたんだよ」
箱を瑞穂さんに渡すと「えっ」と呟いてくる。
「弘前のアップルパイと北九州の豚まんあんまんセット、どっちも瑞穂さん好きそうだなと思って用意しといたのに」
どうすんだこれという何とも言い難い気持ちで小さくため息が漏れた。
「まあどっちも冷凍庫入れとけば日持ちするから良いけどさ」
アップルパイはデザートにしようと私が告げると瑞穂さんはごめんと小さく詫びた。
「やっぱ報・連・相は大事だわ」
甘いものはいくらあってもいいけれど、多すぎるのも困りもの。
まあこれも幸福なトラブルという事にして置こうじゃないか。





おまけ
英人「ちなみに入ってくるときに言ってた奴、何なの?」
秋恵「大泉洋の真似」

今年もフォロワーからアップルパイ貰ったよヤッター!というアレです
紫色のタルトは紫芋タルト(どこのかは決めてない)、黄色のタルトはキルフェボンのパンプキンタルト、アップルパイはタムラファーム、豚まんあんまんは揚子江のつもりでした。揚子江の豚まん、気になります。