関西電力は今年の七月上旬に向け高浜原発1号機を再稼働する旨で方針を固める。

 首都圏は関西と比べて、従来の五割高のままの電気料金という現状。

 

 よく保守派のほうから、既存商業原子炉の再稼働を求める声と動きが見られますが、

実際に日本の既存商業原子炉は、再稼働したくても一旦運転を停止し、本来は廃炉に持っていくしか

路は確保されていないのです。

 

 現在国内に存在する商業原子炉は1960年代に一次原子力発電所建造計画とも言えるような

国が挙げての一大計画として各地に築かれていったものです。

 次に1970~80年代に書け、第二次原発建設計画が推進されました。

 建設後30年から40年を経過した原子炉というものは原子炉本体である圧力容器と外側の格納容器、さらに建屋やタービン、冷却系配管らを全て含めた建物自体の解体を行わなければ、ならないのですが。

 日本は解体する術を知らない事と、慢性的に不足する国内電力需要から 中々廃炉、解体へと移行できない現状が壁として立ちはだかっているのです。

 

 現在の軽水炉自体は第三、第四世代と呼ばれる次世代、新世代原子炉に規格が新たにされています。

 大概の原子炉の熱電変換における出力比は沸騰水型軽水炉(BWR)では、熱出力330万kw/hの場合、電気出力が110万kw/hですので、熱が電力に変換されると(実際には蒸気の高圧ジェットでタービンを回転させる事)1/3が電力として生産される事になります。

 

 実はわが国日本も2008年頃には「原子力ルネサンス」と称した一大計画が外交・貿易を通して

日本の高位品質な安全性の高い原子炉を世界に技術として送り出そうとしていた事実が存在します。

 

 その中には当然ロシアも含まれておりました。その以前より日本政府と当時の核燃料サイクル開発機構、現在の日本原子力研究開発機構が日本の原子力発電技術、とりわけ商業軽水炉をロシアに技術開発援助として積極的に行って来た背景が、ありました。

日本が95年に完成より運転操業後に僅か1,2か月で冷却配管に設置していた温度計取付不備によるナトリウム冷却材漏洩による事故以後、停止したままで中止、頓挫した「高速増殖炉もんじゅ」が

あったわけですが。

 その日本が中止断念した高速増殖炉が、ロシアはどうしても技術支援協力を得て、自国で開発成功させたかったのです。

 ロシアは当時、民主化から十年やっと経過するくらいで、まだまだ国内のエネルギー不足、電力不足は慢性的に国民と政治家、技術者に科学者でさえ頭を悩ませていたわけです。

 そんな折に、日本の軽水炉と高速増殖炉はロシアを救う目玉商品だったのですから。

日本の原型炉技術を、ほぼほぼそのままロシアは提供を受けて、日本が東日本大震災で津波による福島原発での事故を起こす直前には、原型炉をそのまま一部改良を施して、そのまま実用炉にまで成功させたのです。

 

 当時は他にも、ロシア国内には冷戦時代に大量製造された遺物ともいえる、「核兵器解体後余剰核物質」が行き場を失くす程に存在していたこともあり、日本のサイクル機構も新たな余剰Puや濃縮ウランの原子炉燃料への使用法としての新技術・新素材開発の研究にエネルギーを注ぎました。

 

 マトリックス燃料、ROX燃料とよばれる燃料ペレットの開発や、プルトニウムの冷却貯蔵用容器、いわゆる燃料キャスクと呼ばれるモノの開発も含め、日本は結構意欲的に原子力開発と外交での推進には国内の左翼勢力による反対に負けない勢いで行ってきましたが、

やはりそこでIAEAが定めるレベル7に匹敵する事故が発生してしまいました。

レベル7とは、LOCA(Loss-of Coolant Accident:冷却材喪失事故)いわゆる俗にいうメルトダウン事故が該当するのです。

 

 この事故による被災地の方々には、本当に心からお見舞いを申し上げます。

 ただし、この事故により、「原子力ルネサンス」たる国家一大計画も中止せざるを得ない状況に追い込まれたのは確かなのです。

 

 この事故から、教訓を得て、わが国には新たに原子力規制庁が設置付されたのですが。

 まず既存原子炉で、ここ昨年から今年にかけて、運転が停止された原子炉は多数ありますが。

 

 通常では、本来は廃止廃炉にしたいと政府が思っている原子炉が殆どな現状です。

 原発再稼働の前に、核武装の是非の一部での是々非々の議論よりも先に。

 日本の原子炉は一旦廃炉にして、解体する。

 また同時進行で新たな商業炉を建造すべきなのです。

 

 

 私は元来、原子力を含めて実際に携わってきた事のある技術者でしたから。

 この問題を保守派の政治活動者に訴えかけてもエネルギー工学や物理学に造詣の深い方が殆ど皆無のため、財政学や政治学的な解決代替案の打診や質問しか、やはり返って来ないのです。

 財政学的な懸念や問題解決にだけ終始しても、原子力という科学技術は特殊なものですので。

そう単純明快には解決の事は運ばないのです。

 

 私が思うことは、保守派のみならず、リベラルも同様ですが。

科学知識と教養を最低限、本当にしっかりと身に着けてほしいと真摯に願います。

昨今賑わせた新型コロナウイルス、いわゆるCOVIDも然り同様で基本的な分子生物学、ウイルス学と感染症学、医学的な理論を知れば、自ずと議論が深まり解決の糸口は近く早くなるように思うのです。

 

 何故ならば、国民が大勢で正しく深い知識と理解を前提にした議論が納得いくまで出来るから。

 

 メガソーラー問題やEV自動車の政策問題も、実際には政治家とお役所の官僚らの科学への素養の圧倒的な素養の少なさが致命的な程、効を奏した結果と言えるでしょう。

 

【科学技術創造立国日本】

そのスローガンを日本は何処に見失ったのでしょうか?

 

今回は思うところを殴り書きするように長文に致しましたが。

 

前向きに日本は解決努力するべきでしょうね。

 

 

2023/6/29 有栖川すばる

 

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