11月30日は
カナちゃんの誕生日だ
でも、僕はそれ以上
カナちゃんの事を知らない
遊んだ事もなく
話した事すらない
正確には遊んだり話した
記憶がないのだ
今風に言うと
カナちゃんの母と
僕の母はママ友で
母親達は仲良しなのだが
僕らは自我が芽生えてから
一緒に遊んだ事がないのだ
僕は生まれる前から
銭湯通いだ
母の腹の中に居る時から
銭湯に通っていたからだ
僕は小1の夏まで
母と一緒に銭湯に入った
カナちゃんは小3まで
父親と銭湯に入ってた
小5の頃
カナちゃんの父親は死んだ
高1の頃
朝の駅のプラットホームで
カナちゃんの母を見かけた
通勤中なのだろう
スーツを着て
口紅をひいて
そして、昔みたいな
優しい目をしてなかった
僕とカナちゃんは
誕生日が一日違うだけ
今日で僕もカナちゃんも
42歳
どこかで
幸せに暮らしているのかな
毎年そう思う
今日は何時もよりも
多めに買い物をした
運転席側からじゃ
買い物袋が持ち上がらず
外側から助手席に回った
助手席側の駐車場の
アスファルトの隙間から
ちっちゃな花が咲いていた
こんにちは
僕は一言
つぶやいて
また
誰も居ない部屋で
ただいまって
つぶやいた