ずいぶん中学校生活に慣れてきていた頃だった。




私は「あの」松島の妹だという事でかなり注目されていた。




先輩の2年生、3年生には特に注目されていたのだ。




入学式の時の「たける先輩」というのは姉達が卒業してからは




その中学校の不良たちを取り仕切っている人だった。




いわゆる番長。




そんなたける先輩は私を見かける度に「美優ちゃ~ん」なんて言いながら




手を振ってきていた。




私はニッコリ笑いながら会釈をする。




そんな行為だがとても優越感に浸っていた。




それは、番張っている人と誰も話せないのに私の場合本人から直接




話しかけてきてくれるからだ。




なんとも言えぬ満足感。




しばらく私は中学校生活を様子を見ながら過ごしてきたが




遂に行動にでた。




姉からもらったお古の制服をきて学校へ行く。




くるぶしまである程のロングスカートだった。




入学の時に制服は新調してもらっていたが、私にはどうでもよかった。




そんな制服よりも、姉にお願いして取って置いてもらった姉のスカートがはきたかった。




姉は後輩にも人気があったのか卒業するときに数え切れない程の後輩から




制服をください。松島先輩が着てた制服が着たいです。というおねだりがかなりあったらしい。




そんな姉は私に1枚だけ残しておいてくれたのだ。




姉の友人達も「美優ちゃんにあげるよ」といって何枚も持ってきてくれた。




私はその数々のスカートをいつ学校へ着ていこうか毎日ワクワクしていたのだ。






初めてのロングスカート。嬉しくて仕方なかった。




遂にデビューした気がした。これで1歩姉に近づいた。




歩くたびに皆が振り返る。




学校へ行ってもそうだった。皆の視線を浴びながら歩く。




なんて気持ちいいんだろう。心の中で羨ましいでしょう?と笑っていた。




しかし、その私の姿を見て先輩も行動に出た。




学校の不良たちの長年の言い伝え。




3年生はどんなにロングスカートでもOK.。




2年生は3年より長いスカートはNG。




1年生はもっとダメ。




もちろんそんな事は知っていた。それでも着たかった。




それを着ているだけで強くなった気がした。




すぐに先輩からの呼び出し。




「松島ちょっと顔貸しな」




きた!!




初めての呼び出し。心臓が壊れるんじゃないかと思うくらいドキドキしていた。




おとなしくついていく。




着いて行った先には怖い2年の先輩が6人くらい待っていた。




「お前さ、なにそのスカート?」




「うちらより長いだろ?どういう事か分かってんの?」




周りを皆に囲まれ今にも殴りかかってきそうな勢い・・・






怖かった・・・。足が震えた・・・。でも・・・




「私がはきたいからはいているんです・・・」




消え入りそうな声しかでてこない。




先輩達は「はぁ?何言ってんの!?ぶっとばすよ!」




ジリジリと近づいてくる。ヤバイ。やられるかな・・・?




そう思ったとき、丁度たける先輩が通ったのだ。




「あれ~?美優ちゃん?何してるの?」




あっ・・・




2年の先輩は一瞬にして整列した。




「何?しめられてるの?」笑いながらたける先輩。




「・・・・」私は無言だった。




たける先輩は2年生を見ながら




「女って怖いね~・・・皆で一人をいじめちゃって~」




先輩達は慌てて




「いえ、違います。でも松島が調子にのっているから・・・」




「ふ~ん・・・・。まぁいいや。今日はこれで終わりね。あまり苛めたらダメだよ~」




そう言いながら私の手を引っ張り行こうと促した。




数歩歩いて振り返ると先輩達はものすごい顔で私をにらんでいたのだった・・・




私がたける先輩にかばってもらったのが余程気に入らなかったのだろう。




その後2年生の先輩が3年生の先輩に相談したのも知らずに




相変わらず私は我がもの顔でロングスカートをなびかせ歩いていた・・・

私は中学校入学を迎えていた。


姉が3歳年上なので丁度姉が卒業、私が入学することになる。


その頃の家庭は家族バラバラだった。


父と義母の関係はうまくいっておらず、義母は弟を連れて家を出ていたからである。


その為、2週間前の小学校の卒業式も両親の代わりに姉が出席してくれた。


私たちを見る周りの視線がとても痛かった・・・。


「なんで親が出席しないでお姉ちゃんなんでしょうね?可愛そうに・・・」


きっと皆がそんな目で見ていたんだと思う。


それでも私は大好きな姉が来てくれて嬉しかった。


姉は当時不良だったが、そんな姉を私は羨ましく、そして憧れていた。


自慢の姉だった。


「私もお姉ちゃんみたいになりたい。」


何を思ってそんなこと考えていたのかは覚えていないが


中学校に入れば何かが変わる。そんな気がしてならなかったのだ。



中学校入学の日。


朝からそわそわしている私に姉は


「美優、こっちおいで。髪の毛やってあげる」


「ホント?やった~」


姉は器用なのだ。


鏡の前に座ると姉は用意してあった「コテ」で私の髪の毛を巻き始めた。


「ねぇねぇ、入学式からこんなクリクリにして行ったら先輩に目つけられない?」


「大丈夫だよ、美優は私の妹だもん。何か言われたらすぐ言いな。守ってあげるから」


その言葉を聞いてホッとしたのを覚えている。


いつの間にか前髪はコテで流れるようにしてあり、サイドの毛もクリクリにしてある。


なんだか姉の仲間入りしたようであり少し大人になった気がした。


「できたよ。じゃあ入学式も私がでるから、あとでね」


「うん。ありがとう。じゃああとでね」


そういって中学校へ向かう道で私のドキドキは止まらなかった。


その当時髪の毛巻くなんて不良しかしてなかったのだ。


行く前に姉は「私のスカートはいていきなよ」と言い差し出したのは


とっても長いスカート。さすがに入学式からそれは・・・と思い断ったのだ。



入学式が始まり、新入生入場の時驚くことが起きた。


すでに在校生は座っていて、その間を新入生が歩いていくのだが、


そのなかで見た目ものすごく怖い男の先輩がしきりに人を探しているようだった。


「松島先輩の妹いるんだってよ。どの子だ~?」


という声が聞こえてきた。


わたしの事だ!どうしよう。怖いかも・・・


他の在校生は皆座っているのにその先輩だけは席をたって近づいてくる。


うわぁーもう少しで見つかる・・・。


その時だ。目が合ってしまった。


「・・・・松島先輩の妹?」


「はい・・・。」小さい声で答えた。皆私に注目している。


「へぇ~かわいいね。名前は?」


「美優です・・・」


「美優ちゃんね。おれたけるっていうんだ」


その時やっと先生がきてその「たける先輩」という人は連れて行かれた。


それにしても怖かった。ばっちり決めてあるリーゼントにズボンも「ボンタン」


と言われている太いズボンをはいていた。


入学式も無事に終わり新入生の集合記念写真撮るとき


保護者も一緒に映ったのだが、やはり私の場合は姉だった。


それでも私はチョット鼻が高かった。


怖かったがあんなに大勢の前で皆私の事を見ていた。


もちろん先生方も「あの松島の妹」ということで注目していたようだ。


姉は、中学校創立以来の悪といわれていた・・・。


そして私も少しづつ崩れていったのだ・・・・。