凍てつく風が身体を叩いていく。
ついこの間までは暑い日差しが降り注いでいたのに、今ではもうすっかり木の葉が落ちる時期へとなってしまった。
歩く人は皆、コートを羽織り、マフラーを首に巻いている。
亀のように首をすくめ、帰路をたどる。
でも急ぎはしない。
私の隣を歩く人、会社の先輩がその理由だ。
見た目は、どこか気の抜けたような顔をしているが、性格はしっかり者であった。
皆が頼るほどの仕事意気を発揮し、頭の回転は速い。
それなのに、天然さんなのだ。
恋には疎く、時々発言が私の胸を抉る。
それに、私の恋にも気づいてくれない。
「今日は一段と寒いね。」
そう私に声をかける。
人の気も知らないでのんきな優しい声。
「そうですね。もうすぐでクリスマスですからなおさらですよ!」
「クリスマスかぁ…リア充ばっかで気が重いなぁ…。」
そんなことを呟くこの人に、私は微笑する。
ふと、私もこの人の彼女に慣れたらと思ってしまう。
しかし、先輩は恋をしたことがないと言う。
経験があるわけでも察することもままならない。
言いたいのをぐっと抑え込んで、私はにこやかな笑みを浮かべる。
「どうしたの?」
「別に何でもありませんよ。イルミネーションとかどこへ見に行こうかなと思っただけで。」
「おお、俺も見たいな。行く?」
「いいですね!!ほかの方も誘いますか?」
「いや、いいよ。二人で行こう。近いうちにさ。」
――ほら、またそういうことを言う。
勘違いが終わらないこの連鎖。
私が告白をしてしまえばいいのだけど、断られて関係が変わってしまうのが怖い。
臆病になっている私が嫌いで、でもこのもどかしいのを終わらせたい自分がいる。
「ほんと、ばかみたい…。」
ぼそっとつぶやく私の声は、冬の風に消えていった。
――先輩side
俺と肩を並べて歩いてるのは会社の後輩。
思わず手を伸ばして、頭を撫でたくなるような雰囲気を醸し出している。
少しバカな子で、天然の女の子。
守ってあげたいと思わせる行動、仕草をする。
たまに、抱きしめてしまいたくなる衝動に駆られてしまう。
だが、彼女でもないこの子を抱きしめるはまずいだろう。
そう思っているのに、セーブをかけているのにこの子は踏み込んでくる。
俺は恋愛感情なんてわからないし、この子に抱いている思いもわからない。
でも、なんとなくずっと一緒にいられたらと思ってしまう。
そんな自分に驚きを隠せないでいる。
この、すべての疲れが吹き飛ぶような、安心感を抱くのはなぜだろう。
「今日は一段と寒いね。」
「そうですね。もうすぐでクリスマスですからなおさらですよ!」
「クリスマスかぁ…リア充ばっかで気が重いなぁ…。」
本当にそう思う。
他愛もない会話なのに、クリスマスと聞くと気が重い。
すると、彼女を見ると少し楽しそうにしていた。
「どうしたの?」
「別に何でもありませんよ。イルミネーションとかどこへ見に行こうかなと思っただけで。」
「おお、俺も見たいな。行く?」
「いいですね!!ほかの方も誘いますか?」
ほかの人。
この子が知っている友人と行こうかと考えたが、嫌だと思ってしまう。
俺と二人で行くのは嫌なのか?
「いや、いいよ。二人で行こう。近いうちにさ。」
「え、はい!」
少し戸惑った顔をする。
困らせてしまったのか、複雑な顔をしていた。
でも、すぐに俯いてしまい、表情が見えなくなった。
何かをつぶやいたと思ったが、風の音でうまく聞こえない。
不安になりつつも、なんとなく感じるこのもどかしさが、なんとなく心地よく思えた。
俺は、彼女をどう思っているのだろ。
ふと過るある言葉。
それは――。