1月29日読了

 

内容

育った家がごみ屋敷となり果て、久しぶりに戻った美佐。

家を片づけていく過程で金庫を発見する。

そこからひもとかれる、家族にさえ言えなかった叔母の秘密とは……。

朝日新聞連載時から話題! 

湊かなえが新たに挑む、先が読めない「介護ミステリ」。

 

すきな作家さんなので何冊も読んでいますが、

BSテレ東「あの本、読みました?」で紹介され、

著者のコメントを聞いて更に読みたくなり手に取りました。

 

中学生の時に両親を事故で亡くした美佐は、

叔母の弥生に引き取られて高校時代を過ごす。
それから約30年ほど経ち、叔母に認知症の症状が見られると

役場から連絡があり故郷を訪れると、ゴミ屋敷化された伯母の家があり、

その家を片付けている途中で金庫を発見する。

開かずの金庫から一冊の本が現われ過去の扉が明かされていくというミステリ。

 

中盤までは大まかな美佐の生い立ちや叔母の弥生と過ごした時間、

そしてゴミ屋敷を片付けていく途中で金庫から一冊の本を

発見するということがテンポよく描かれています。

それまでは叔母に対してはさほど思い出らしいことや

感情が入り乱れることがなかったですが、

日記を読み出してからの美佐の心境はどんどんと変わっていき、

ここからがこの作品のテーマでもある介護についての事も

描かれていくので読み応えのある展開となっていったので、

物語にどんどんと引き込まれていきました。

 

文中にあった邦彦が言った

「男には母親の下の世話はできないよ。」

では、邦彦に、夫に、男に、妻の下の世話ができるのだろうか。

という一文。

いつの時代になっても女性が家族の介護をするという概念が

取り払われなくて、それが叔母の時代では更に根強く

習慣化していたことから思いもしないことが起きたり、

悲しい結末を迎えることになりかねないと思ってしまいました。

 

著者の作品はイヤミスのミステリーという印象が強いですが、

この作品では介護、嫁姑問題、ゴミ屋敷問題などと

現代における社会問題が多く盛り込まれているので、

まだ解決されていない問題ばかりなので頭を悩ませながら

読んだり、考えるべき問題が様々ありました。

 

昔は家で行われていたことが現在では専門家に

任せるのが当たり前の時代なのに、

どうして育児や介護は家庭内で主婦が請け負うことになるのだろう。

CARE(介護)とCHAIN(絆という束縛)は同一線上にあれど、

同一のCODE(体系)ではない。

と一節がとても印象的なので、著者は特に強調して言いたいこと

だったのかなと感じました。

 

作品中に登場した「ノルウェーの森」は確か発売された当時は

大人気だったので読んだ記憶があります。

まだ学生だったので理解しきれなくてよく分からなかった

記憶がありますが、その他にも登場していた本も懐かしいタイトル

ばかりでした。当時流行っていたものも登場していたので

美佐と一緒にその当時にタイムスリップした気持ちになりました。

 

本のタイトルを見た時に何故「G線上のアリア」ではなく、

「C線上のアリア」なのだと思って章を読み進めていくと、

なんとそれぞれの章のタイトルにはCで始まっていました。

それも介護にまつわる意味の深いタイトルということに

気が付きました。

物語の中だけの仕掛けだけでなく、

タイトルにも秘密が仕掛けられていたのには吃驚でした。

 

登場人物が多く、現在と日記間を往復しているので、

少し頭が混乱しそうになりましたが、

ラストは少しだけ明るい未来が見えたのですっきりとしました。

この本のカバーの色もノルウェーの森と似ているし、

一冊の中で色々な箇所で仕掛けられているのも楽しめました。

介護ミステリーという新しい新境地での作品も良かったので、

今後の作品も期待したいと思います。