数日前、いつものようにラジオでKBS京都を聞きながら車を運転していた時に、番組の中で紹介されたリスナーからのハガキで思わず大笑いしてしまいました。![]()
当時二十歳だったリスナー(男性)は、初デートの食事の際にその頃流行っていたいた激辛カレーの店にガールフレンドを伴って入りました。![]()
本当はそれほど辛いものが好きではないにもかかわらず、眉毛ひとつ動かさずに激辛カレーを完食する雄々しい姿をガールフレンドに見せて好感度をアップさせようというのが彼の目的だったそうです。この辺から既に暗雲が立ち込める気配が感じられますが…![]()
彼女には通常の辛さのカレーを、そして自分自身には数十倍の辛さのカレーを頼み、程なくして激辛カレーが運ばれて来ました。
「オレ、こういうの食べても全然大丈夫だかんね!」という涼し気な微笑みを浮かべながらスプーンの匙を口に入れ数回咀嚼し、
「うーん…これでもちょっと物足りないんだよね」とでも言わんばかりの余裕ある表情を見てもらおうと彼女の方を向いた瞬間、何が起こったか分からないくらいの衝撃が口内を貫いたそうです。![]()
辛いのと痛いのとで思わず咳き込みそうになるのを必死でこらえ、水の入ったコップに手を出せば敗北を宣言するに等しいと考え思い切り背を向け、自分の体内で発生した異変を悟られまいとして必死にスプーンを口に運び、何とか食べ終えたそうです。![]()
しかし彼の気合も自律神経まではコントロールできず、着ていたシャツは土砂降りの雨に当たったかのようにぐっしょりと濡れ肌にピッタリと貼りつき、異変に気付いたガールフレンドから「今日はもう帰ろう」と促されてついに心が折れ、帰宅して服を着替えた…とのことでした。![]()
この馬鹿馬鹿しい彼の行動を聞いて大笑いしつつ、一方で僕は既視感のようなものを覚えました。
後になったら滑稽で独りよがりとしか言えない行為でも、当の本人は100%本気でやっているのです。 本人はそれをなぜか「イケてる」と考え、自分の魅力をアピールするにはこの方法しかないと切実に思いつつ行動しているのです。![]()
好きな人に自分のイケてる姿を見て欲しいと思うのは、ごく当然の感情です。しかし…自分ではイケてると思うその姿が、自分以外の人にとって全くイケてるように見えないとき、悲劇が生まれるのです。むしろ喜劇と言っていいかも知れませんが…![]()
激辛カレーを完食することで「イケてる男」をアピールするというのも、当時の本人は大真面目だったのでしょうが、この方法が万人のマニュアルになるとは思えません。元来、手段は目的を果たすためにありますが、目的を果たすどころか、かえって目的から遠ざかるような手段を選んでしまう残念な人が一定数存在します。![]()
「男は~である」「女は~である」といった性別で括って話すのは時代に逆行していると承知していますが、それでもこうした勘違いは圧倒的に男性に多いように思います。![]()
かつて友人から聞いた話ですが、彼が学生時代にアルバイトをしていたジーンズショップにやって来た客がジーンズに非常に詳しい人で、商品に関して細かい質問攻めにあい、とても彼には手に負えなかったので店長に接客を代わってもらったそうです。
その店長はジーンズが好きで業界に入った人なので当然造詣が深く、両者の間でウンチク合戦が始まり、客が一言質問するとヒートアップした店長が十言くらい返し、そのうち客がタジタジとなって何も買わずに店を出て行ったら、店長が
「ざまあ見ろ!
」と満足げに言い放ったそうです。![]()
うーん…「ざまあ見ろ」の言葉はむしろ店長にふさわしい気がしますが…![]()
「中二病」という言葉を近頃よく耳にしますが、男の愚かさをよく言い表しているように思います。 もしかしたら17世紀の『ドン・キホーテ』辺りが「中二病」の始まりかも知れません。![]()
さてさて、人のことをさんざんオカズにしてきましたので、自分自身の「中二病」についても話さなければなりません。何を隠そう、僕も相当イタい「中二病」患者です…![]()
まだ20代の頃に知り合いの女性と食事に行った時のことです。彼女(Aさんとしておきます)とは年に数回一緒に食事に行く間柄でした。異性ですが友達のうちの一人でした。![]()
この日も食事をしながら梅田のとあるバーでしゃべっていました。Aさんは女友達と連れ立って来ており、僕は初対面だったのですが、そんなに緊張するタイプの付き合いでもないのでアルコールを嗜みながらおしゃべりしていたのです。![]()
そのうち三人でどういう訳か「今まで食べたもので一番のゲテモノは何か?」という、まあどうでもいいような話になりました。彼女達が挙げた食べ物はそれほど意表を突くゲテモノではありませんでしたし、僕も酒の肴としてごくたまに珍味を口にすることはあるものの、ゲテモノ食いではありません。だからそれを素直に告白すれば、やがてまた別の話題に推移したでしょう。
しかし20代の頃の僕は今より酒量が多く、また酔うのも早かったので思考回路が変な方向へ行ってしまいました。ふと気が付けば
「僕はヒトデを食べたことあるで!」![]()
と勢いで口走っていたのです。
「ええっ!それホンマ?」![]()
と二人は大いに驚いたのを尻目に、僕は得意げに海水浴に行った先で、岩に張り付いたヒトデを鷲掴みにしてかぶりついたと言ったのです。もちろん嘘です。![]()
なぜ嘘をついたのかと思いますが…やはり承認欲求でしょう、武勇伝を仕立てて彼女達をびっくりさせ、自分と言う人間の爪痕を残したかったに違いありません。![]()
しかし、よりによって何でこんな意味のない嘘をつくのか…彼女達(のどちらか)に好意を持ってモーションをかけるならば、もう少し気の利いた嘘をつけたはずです。飽食の時代にヒトデを食べたなんてただの変人でしかなく、モテる訳がありません。酩酊していたとはいえ、自分でもよく分からない言動です。![]()
ヒトデは身体が半分になっても再生するので食糧難になったらヒトデを食べればいいという話をテレビか何かで知り、ヒトデ→食用可能と思いついて口から出たのだと思います。![]()
さて、「身から出た錆」という言葉がありますが、一旦嘘をついたらつき続けなければならないという厳しい試練が待っています。
その後も時々Aさんに会う機会がありましたが、彼女はその都度異なる女友達とやって来ては、
「なあ、またこないだのヒトデの話してえなあ、この子にも聞かせたって」
とねだるのです。![]()
まだその話覚えていたの…と言いたいところですが、爪痕を残そうとしたのはこちらの方です。覚えている範囲で同じ話を繰り返しました。それなりにウケましたが、罪悪感を感じない訳にはいきませんでした。![]()
これで懲りた、当分調子に乗らんとこう…と誓いましたが、それから程なくして、またAさんと会うことになったのです!![]()
お誘いを断ることもできず、気の重さを感じつつ待ち合わせ場所に到着すると、またもや別の女友達と来ているではありませんか!あかん、万事休すや…!
もう嘘をつくのにいい加減疲れていたので、またぞろヒトデの話を振られる前に自分から白状しようと思い、食事をしながら酔う前に
「実はこないだの話やけどさ…」
と切り出して、一切合切を白状しました。すると、
「ああ、やっぱりそうやったん!何となく分かってたけどさ…」
と言って笑うではありませんか!そうなの…最初から全てわかってたのね…![]()
年下だけど一枚も二枚も上手の女性にノックアウトされ、みっともない事この上なしです。
まあ、精神年齢が「中二」だから無理もないか…![]()
