2016.2.3 Weds.




納骨して半月……家が空っぽになった。

2年以上入院してた。
ずっと家には居なかった。
一時帰宅できたのは最期の2週間だけだった。

それでも、この家を守っていたのは間違いなくお母さんで…。ボクやお父さんはお母さんの心に守られていた。それはお母さんが白い箱に入ってもおんなじだった。


窓際に3カ月あった白い箱がなくなって、ピアノの部屋が妙にガランとしてしまった。今度こそ家の守り主を失ったようだ。

もちろん、お母さんは心の中に生きている。
生きているけど、見た目の喪失感は意識せざるを得ない。それもあってボクはお母さんのグランドピアノをお祖母様に返すと言い出せなかった。思い出の詰まったこの洋室を空っぽにするのが怖いんだ。


お父さんとも話した。
ピアノを本家に戻したら…。

ピアノは戻っても持ち主は帰らない。
お母さんの“不在”をより感じるだろうか?
それとも結婚して家を出たことすら無かったことにしてしまうのか?
元通りにするならピアノ部屋に置くだろう。
あの部屋はずっとボクが使っていた。
元に戻したら、決定的にボクは存在しなくなるかもしれない。
お祖母様の気持ちを考えれば、そのほうが良い?ボクの存在は消した方が簡単かも。


「和也のしたいようにしなさい。」


お父さん…。ずるいよ…。
強引に納骨して“死”を認めさせて、
それでお祖母様のケアは終わり?
ボクは?




大好きなお祖母様…。
これ以上辛い顔は見たくない。
優しい笑顔を見たいんだ。でも…。


「和也は自慢の孫だから。」


お願い、ボクの名前を呼んで…。