2016.1.17 Sun.
お祖母様のタクシーを見送った。
お父さんと車で家に戻る。
「和也、すまなかった。
でも明らかに先週とは違っている。」
「……そうだった?」
「翠がもういないこと、実感して下さったと思う。元々、理解はされていたんだから。」
「お祖母様、大丈夫かな?
また、辛い想いを…。」
「それはお前も私も同じだ。翠を亡くして辛いのはお義母さんだけじゃない。」
「だけど…。」
「どう頑張っても和也は代わりになれない。
和也は和也、代わりになってはいけない。
ずっと自慢の孫だって言ってただろ?」
本当にそうかな。
お母さんがボクを出産しなければ、きっと今もお祖母様とふたり寄り添って生きていけたはずなのに…。それを思うとお祖母様がボクの存在を認められないのも無理はない。
お母さんは天国からお祖母様のことを心配しているに違いない。以前のように強くて優しいお祖母様に戻って欲しいと思っているはずだ。
ボクだって同じ…。
自慢の孫だって言ってくれた、慈愛に満ちた笑顔をもう一度見たい。
家に着いた。
ピアノのそばの丸テーブル、小さな花瓶だけが残されている。
もうココにお母さんはいない。
レースのクロスをたたみ、丸テーブルも片付ける。急に部屋が広くなったみたいに感じる。
お母さんのグランドピアノ、中学入学のお祝いにお祖父様が贈られたそうだ。
お母さんの成長をずっと見守ってココにある。
でもこれ、本家に返した方がいいのかな…。
お祖母様が少しでも寂しさを紛らわせることができるなら…。
ボクは…思い出だけで生きていけるから。