2016.1.9 Sat.





「和也。大丈夫か?」
「ん…。」
「もう8時すぎたけど。
 どこか具合でも悪いのか?」
「え?ごめんなさい、もう起きます。」


土曜の朝、お父さんに起こされた。
気が弛んでいたのかな?


「お父さん、朝ごはん、食べた?」
「パンとコーヒーはね。」
「ごめんね。寝過ごしちゃった。」
「いや、それはいいけど…
 レッスンやめて、医者に来てもらおうか?」
「ううん、大丈夫。
 心配かけてごめんなさい。」


なんだか体が重い。ピアノ、弾けるかな?

今日は年が明けて最初のレッスンだ。
急にキャンセルするのは申し訳ない。
毎週土曜の朝10時、お母さんとふたりでずっと続けてきた。

あ、しまった。お茶菓子の用意がない。
昨日…お祖母様のところからバタバタ帰って忘れてた。今から買いに行って間に合うかな…。



「失礼します、おはようございます。」
「ヒロコさん⁉ おはようございます。
 あれ?ひとり?お義母さんは?」
「今日、年明け最初のレッスンだからお手伝いに参りました。奥様がそうしろと言われて。」
「おはようございます。助かった。
 僕、お茶菓子の用意を忘れて…。」
「和也さま、おはようございます。
 大丈夫、ア◯リに寄ってきましたよ。」
「さすがです、良かった。」


家政婦のヒロコさんが来て下さった。
これで後はピアノのことだけ考えればいい。
今日のところをおさらいしなきゃ…。

10年以上続くレッスン、先生も二人目だ。
スッキリしないままレッスンを受けた。

レッスン後、お茶のお相手はお父さんに任せて、僕は早々に部屋へさがった。
熱があるかもしれない。
とにかく、横になりたい。








どれほど時間がたったんだろう。
眠り込んでいたのか…。
遠くでお父さんとお医者様の声が聞こえた。


「過労ですね。」
「過労?和也はまだ15才ですよ。」
「これ以上、彼に無理させないでください。」




また僕のせいで…。
ごめんなさい、お父さん…。