お母さん…。
まだ信じられないよ。
これから僕はどうすればいいんだろう。
「和くんを産んでから、
いっぱい嬉しいことがあったわ。
もうね、一日一日がありがたいの。」
もうね、一日一日がありがたいの。」
「私の夢はみんな和くんが叶えてくれる。
笑顔の和くんが一番のお薬だわ。
私は、本当に幸せなのよ。」
笑顔の和くんが一番のお薬だわ。
私は、本当に幸せなのよ。」
「こんなに一度に夢が叶って、
幸せな気持ちで胸がいっぱいよ。」
「この幸せな気分でいさせて欲しいの。
これで最後にするから。」
お母さん……。
最期は幸せそうに微笑んでいた。
ほんとに幸せだった?
ほんとに僕を産んで良かったの?
「やっぱり出産が無理だったんですね。」
「そうよ。貴方には止めて欲しかった。」
「そうよ。貴方には止めて欲しかった。」
「でも翠が…自分と引き替えにしてでも、
偶然授かった小さな命を守ろうと…。
二度と得られない命を守りたかった。
私にとっても翠と同じくらい大切で…。」
「あの娘が一日でも長く生きてくれれば…。
和也が丈夫なのが救いだわ。」
「これからも守っていきますから…。」
「もしもの時は…私が和也を…。」
「いえ、私がそのまま…お願いします。」
和也が丈夫なのが救いだわ。」
「これからも守っていきますから…。」
「もしもの時は…私が和也を…。」
「いえ、私がそのまま…お願いします。」
「でも、あの子は…。」
「あの子は私の!…息子なんです。」
小さい頃から何度も繰り返されてた話…。
小さかったボクはよく理解出来なかった。
聞いてはいけない話だった。
ボクは生まれちゃいけなかったこと。
ボクが生まれたせいで……
お母さんが死んじゃうかもしれなくて…
お祖母様とお父さんが気まずくなって…
…いろいろなことにボクが気づいちゃいけないってこと。
ボクに何ができる?
どうすれば、お母さんが元気になって、お祖母様とお父さんと…みんなが一緒に笑顔でいられるのか…。
それだけを考えて生きてきた。
考えられることは全部やった。
お母さんの喜ぶ顔が見られるなら、どんな努力も無理なくできた。
自分の喜びでもあった。
たくさん誉められて、笑顔をもらって、
ボクでも役に立てるんだって頑張れた。
お祖母様もお父さんも優しくて、
お母さんの笑顔がみんなの幸せだったのに…。
ホントは生まれるはずじゃなかった…
だとしても…それでも…ボクは…
ありがとう和くん
生まれてきてくれてありがとう
本当にあなたを産んで良かった
お母さんの息子に生まれて良かったよ。