2015.10.21 Weds.




「「おじゃまします!」」

部活を早めに切り上げて、ふたりがやって来てくれた。

「今日はわざわざありがとう。
 部活は大丈夫?」
「テスト最終日はミーティングだけだし、
 なんの問題もないよ。」
「ウチも文化祭の曲を決めただけで、本格的な練習は来週からなの。」

リビングに案内するとお祖母様がにこやかに出迎えてくれた。部屋で休んでいたお母さん、看護師さんが車いすでリビングに連れてきてくれた。

「いらっしゃいませ。」
「こんにちは。」
「お招きありがとうございます。」
「二人ともよく来て下さいました。」
「どうぞごゆっくり。」



僕はお祖母様とお茶の仕度に取りかかった。

初めてのお茶会、だから今日は特別。
紅茶は Fortnum & Masonのロイヤルブレンド。
お茶菓子はツマ◯リ。焼き菓子は全国のデパートに出回っているけどフレッシュケーキは本店でしか手に入らない。素材を活かしたシンプルな味が特徴で、タルト、ロールケーキ、ショートケーキにシュークリーム…もちろん焼き菓子も。
お母さんの好きなモノばかりだ。



「あの…素敵なお庭ですね。」
「すっごく綺麗です!」
「ありがと、ちょうどコスモスが見頃なの。
 和くんがよく手入れを……え?」

やっと気づいたみたい。

「和くん!どうなってるの、これ!」
「お父さんに取り寄せてもらったんだよ。
 双葉造園さんも来て下さった。」
「凄い!お昼にはなかったのに!
 なんて素敵なの!嬉しい…。」
「和也が頑張って探してくれたのよ。」

ちょっと喜ばせ過ぎたかも…。
鈴木くんと黒木さんもびっくりしてる。


桜の紅葉とコスモスと十月桜。
見事に色づいた庭を眺めながら和気あいあいとお茶にした。

お母さんが目を輝かせて活き活きと話している。ほんのりと染まった頰を眺めていると、このまま良くなるような気がして…。



── 時間よ、止まれ ──
僕は本気でそう願った。