過去編ばかりすすめてしまい本編お久しぶりです。
一旦まとめます。すぐ、続きますが…。





2016.04.19 Tues.


«o»


10:30 錦野総合病院

和也が退院する。迎えに来た。
よく考えてみたら、おかしいよね。
運転手の辻が言う。

「こんな智様は初めてです。
 よほど大切な方なんですね。」

まだ知り合って数日、お互い名前しか知らないのに。でも、初めて会ったときから強く惹かれた。いや、響き合った?
とにかく今までにない感覚だ。
『大切な方』なのかもしれない。

「二宮様をお送りしてどうされますか?」
「そうか、退院後ひとりにするのも…。
 しばらく様子を見た方が良いかな?」
「昼食位はご一緒されては?
 二宮様に聞いてみて、OKなら途中で二人分テイクアウトしましょう。」

自分らしくない行動に気づいたとたん、恥ずかしさがこみ上げてきた。





「さ…大野さん、おはようございます。
 今日はありがとうございます。」
「おはよう。ふふ、智で良いよ。
 もう、仕度は出来た?」

初めてみる私服の和也は、めちゃくちゃかわいい。ちょこんとベッドに腰かけて女の子かと思った。
パステルブルーのトレーナーに濃紺のパーカー、ベージュのパンツ。お父さんは気が回らなかったのか、S学院の指定革靴なのはご愛敬だ。

荷物は大きめの紙袋ひとつ、辻が取りに来てくれた。

「初めまして、二宮和也です。
 今日はお世話になります。」
「…あ、辻と申します。
 退院おめでとうございます。」

珍しい…。普段、何事にも動じず、寡黙な辻が、ちょっと慌てて先に車に戻った。和也が想定外に可愛らしくて驚いたに違いない。


「智、あの、今日は少し時間もらえる?」
「うん、途中で何か買って、一緒にランチしようと思っていたんだ。和也の家にお邪魔して良いかな?」
「もちろん!嬉しいです。あ、お父さん散らかして無ければ良いけど。」
「お父さんが帰ってこられるまで独りなんだろう?」
「はい。母のこと、聞きました?」
「いや、なんとなく一人かなと…。」

「いろいろ話をしたいです。
 お互い、何も知らないから。」
「そうだね。ゆっくり話そう。」


エントランスに車が寄せられる。
和也を先に乗せて並んで座った。
指先が触れ、自然と指を絡める。
頰を染めながら見上げられた飴色の瞳に
例えようのない愛しさが込み上げ、見つめ続けてしまう。

「これからは一緒にいよう。」
「一緒に?二人で?」
「これから、ずっと二人で…。」

涙を浮かべた和也は、天使のように微笑んだ。



 守りたい…そばにいるよ。

 貴方と共に…生きていきたい。


ふたり一緒に