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倒れた?木曜日に?
4日も眠っていた?

お父さんも帰り一人になった。
ぼんやりと記憶が蘇る。

駆け寄ってくる潤くんが目に浮かぶ。
あれは…駅前広場?
何故、倒れた?

バスケ部の見学に行って…。
相葉先輩と話して…。
絵が見たくて…智に会いたくて。

あの絵を見たら、涙が溢れて…。
智と目を合わせると、感情が溢れて…。

『涙なら、ここに預けに来ればいい。』
『悲しみと孤独を集めて描いたから…。』
『瞳の奥には果てしない悲しみが広がって、和也の孤独は底知れない。』

その言葉にすべてを…過去の孤独や哀しみを…
さらけ出したくなった。
貴方にぶつけようとしたら背を向けられ、
ひとりあの部屋に取り残された。

布で被われたあの絵!
愛溢れる素晴らしい絵に智が遠い人だと感じた。
私には…手が届かない世界の人と…。






たくさん夢をみた。
小さな私が聞いてしまったイヤな話、
お母さんの優しい笑顔、ピアノ、勉強。
お母さんが入院した日、天国に逝った日。

智の…碧い瞳、熱い唇、遠い背中…。



彼がおとぎ話みたいに目覚めさせてくれた。

明日、智が迎えに来てくれる。
その事実だけでいい。

お互いのことは何も知らない。
ただ、惹かれあった。
互いの孤独に共鳴して。
それで…それだけで良いんですよね?




哀しみも喜びもしまい込むように目を閉じて、眠りについた。


すべては明日から……。