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選抜チームに指名されて2カ月目。
春休み中と毎週土曜日、あわせて10回程合同練習している。強豪校の3年生が殆どで、僕はちょっと浮いた存在だ。
チーム監督は県下1位N高校の監督のA先生、どんなコワイ先生かと思ったけど、ずいぶん優しい先生だ。
顔合わせの初日、心なしか緊張していた僕は、先生の笑顔に救われた。

「S学院から初選抜、おめでとう。
 掛け値無しで選んだんだからな。
 期待には応えてもらうぞ。」
「…はいっ!」
「プレイスタイルを変えるな!
 お前らしさを出していけ!」

チーム全体のレベルが高いのだろう。
周りの人に気遣うことなくのびのびとできた。多分、優秀な先輩方が上手く合わせて下さるからか、どんどん良いプレイができるようになっていった。

ただ、やっぱり基本的な技量は先輩方にはかなわない。期待に応えたい、ましてや足を引っ張るようなことだけは避けたい。
自主練を増やした。S学院の部活だけでは全然追いつかない。

バスケのことは翔チャンにも助けてもらえないから自分でやるしかない。でも、バスケのことなら頑張れる。バスケをやって良かった。

今日も合同練習頑張るぞ!









ユウに感謝だ。誘われなければ始めてなかったんだから。
ユウは小学校のとき児童館の体操教室でバスケに出会って、今までで一番楽しくて、これなら自分にもできるって思ったらしい。でも、人見知りで入部希望が出せなくて。どうしてもバスケを続けたくて。

僕以外クラスの誰とも話せなかったから、やっとのことで僕に打ち明けて、二人で入部したんだ。僕は殆ど初めてだったけど、やってみたら楽しくて、どんどん夢中になって、翔チャンがいなくても頑張れたんだ。

ユウは普段の様子からは想像できない位にイキイキと動いて、プレイ中は別人だった。クラスメイトも最初は気付かなかったぐらいだ。部活以外は相変わらず二人でひっそり過ごしていたしね。

僕とユウは楽しくて、頑張れて、どんどん上達して、中1なのに夏休みには高等部の練習に入れてもらえることになった。
先輩方も優しくて皆が応援してくれてた。
校内合宿まで参加することになった。




合宿で運命的な出会いがあるなんて、その時は想像もしなかった。