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「和也、逢いたかった。」
「さとし、逢いたかった。」
理由なんてわからない。
自然と唇が重なった。
意識をなくしてしまいそうで、目を閉じるのがこわい。
いや…。目を覚ましたとき、あなたが、さとしがいなくなっているのがこわいんだ。
その碧く揺らめく瞳でずっと見つめて…。独りにしないで欲しい。
突然、肩を押してさとしが立ち上がった。
「…さとし…。」
「好きなだけ見ていけばいい。
いつでも、見においで。
鍵は…開けておくよ。」
「えっ…さとし?」
「…和…また、逢えるさ…。」
断ち切るように踵を返して、さとしが部屋を出て行った。
なぜ…?
しばらく動けなかった。
心が通ったと思った…。
その碧い瞳に同じ想いを見つけたのに。
薄暗くなり始めた教室を見回す。
真ん中に据えられた大きなカンバスは真っ白で何だか浮いていた。
入り口側にも数点の絵が掛けてある。
明るい色調でどれもキレイだった。
あの碧い月の絵だけが落ち着いた色調で異色を放っている。前に立つとやはり涙が滲む。よく見ると小さなプレートがあった。
もう帰ろう…。
振り向くとドアと長椅子の間、月の絵より少し大きなカンバスに布が掛かっていた。
なぜ1枚だけ隠してあるの?
見ちゃいけない…。
心の声が聞こえたけど、興味の方がまさってしまった。ゆっくり布を持ち上げる。
明るい色調の絵が現れた。
立派な額縁にプレートが付いている。
タイトルは空?
なのにそこには人物が描かれていた。
これって…。
訳が分からない。
胸が締め付けられる。
誰か…教えて…この絵はいったい…。
誰に聞けば良いの?
鞄を掴んで教室を出た。
帰ろう。
早く帰ろう。
あと少しで駅に着く。
電車に乗ったら家に帰れる。
「ニノッ!」
声に立ち止まる。
ゆっくり振り向くと、潤クンが駆け寄ってきた。
「大丈夫?どうかした?」
「潤くん…私…ぁ…。」
ゆっくり足元の感覚が歪む。
もう耐えられない!
体も心も…。
潤クンの腕に抱きとめられる前に意識がとぎれた。
「和也、逢いたかった。」
「さとし、逢いたかった。」
理由なんてわからない。
自然と唇が重なった。
意識をなくしてしまいそうで、目を閉じるのがこわい。
いや…。目を覚ましたとき、あなたが、さとしがいなくなっているのがこわいんだ。
その碧く揺らめく瞳でずっと見つめて…。独りにしないで欲しい。
突然、肩を押してさとしが立ち上がった。
「…さとし…。」
「好きなだけ見ていけばいい。
いつでも、見においで。
鍵は…開けておくよ。」
「えっ…さとし?」
「…和…また、逢えるさ…。」
断ち切るように踵を返して、さとしが部屋を出て行った。
なぜ…?
しばらく動けなかった。
心が通ったと思った…。
その碧い瞳に同じ想いを見つけたのに。
薄暗くなり始めた教室を見回す。
真ん中に据えられた大きなカンバスは真っ白で何だか浮いていた。
入り口側にも数点の絵が掛けてある。
明るい色調でどれもキレイだった。
あの碧い月の絵だけが落ち着いた色調で異色を放っている。前に立つとやはり涙が滲む。よく見ると小さなプレートがあった。
「 新月 」
SATOSHI
もう帰ろう…。
振り向くとドアと長椅子の間、月の絵より少し大きなカンバスに布が掛かっていた。
なぜ1枚だけ隠してあるの?
見ちゃいけない…。
心の声が聞こえたけど、興味の方がまさってしまった。ゆっくり布を持ち上げる。
明るい色調の絵が現れた。
立派な額縁にプレートが付いている。
「 空 ~憧憬~ 」
大野 智
タイトルは空?
なのにそこには人物が描かれていた。
これって…。
訳が分からない。
胸が締め付けられる。
誰か…教えて…この絵はいったい…。
誰に聞けば良いの?
鞄を掴んで教室を出た。
帰ろう。
早く帰ろう。
あと少しで駅に着く。
電車に乗ったら家に帰れる。
「ニノッ!」
声に立ち止まる。
ゆっくり振り向くと、潤クンが駆け寄ってきた。
「大丈夫?どうかした?」
「潤くん…私…ぁ…。」
ゆっくり足元の感覚が歪む。
もう耐えられない!
体も心も…。
潤クンの腕に抱きとめられる前に意識がとぎれた。