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警備室~観察日記~




2016.3.23 Wed.


本日の予定表を確認し、ちょっと気分があがる。


10時00分  学院理事会
  ↓      食事会
13時00分    〔11:30  弁当 松乃屋〕

13時00分  編入手続 1名(二宮和也)

13時30分  指定業者 錦野商会


先輩が噂していた編入生が今日手続きにやってくる。
普通、ベテラン警備員がただの生徒のことをわざわざ話すなんてありえない。連絡すべき申し送りならともかく、容姿についてウワサするなんて考えられない。
女の子と思った、笑顔が最高だ、色白だ、声も可愛い、文字までカワイイ…。男子校に天使が舞い降りた!
これは期待大だ。
バスケの相葉クン、サッカーの櫻井クン、松本クン、イケメンは他にもいる。相葉クンなんて入学したときはそれこそ女の子みたいだった。だけど、ここまで警備室がざわついたりしなかった。だからこそ今回の二宮クンは期待が高まる。交代で巡回に出るから、うまく13時前に警備室にいるようにしたい。


今日は一番ベテランの近藤さんとペアだ。
近藤さんはS学院の担当になってもう20年以上らしい。

「今日、あの子が来るのか。
 あんな可愛らしい生徒はいないぞ。
 4月から楽しみが増えるよな。」
「そんなカワイイ顔なんですか?」
「顔立ちは整っていて可愛いより綺麗かもしれないな。でも、全体的な雰囲気が可愛らしいんだ。立ち居振る舞いとか仕草とかな。警備員にも礼儀正しいんだぞ。」
「へぇ~。外見だけじゃないんですね。」
「まぁ、来たらわかるよ。
 山口も絶対に女子がきたと思うから。」
「そんなに?」
「俺がそう言ってるのに、東山なんて完全に誰かの妹と思ったらしい。教務主任もやられてるって。男子校に入れて大丈夫か?なんて心配してたよ。」


はぁ~、相当ハードル上がってますね。
期待しすぎてガッカリしたらやだな。
なんだか落ち着かない。ちょっと外周道路見てこよう。
駅へ向かう学院沿いの道は桜並木になっている。つぼみが膨らみはじめた。来月入学式はちょうど見ごろになるだろう。

「こんにちは。」

すれ違う人と挨拶を交わす。
創立135年のS学院は地元での信望も厚い。

「こんにちは。」
「…こんにちは。」

中学生位の女の子が応えてくれた。
初めて見る顔だ。めちゃくちゃカワイイ。

今日は楽しくなりそうだ。
何気なく振り返ると彼女がS学院の正門をくぐるのが見えた。誰かの妹かな?





しまった!
ウワサの彼女、いや彼だったのか……。

ゆっくり顔を拝めるのは来月になりそうだ。