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やっと通常授業が始まった。
雅紀は今日も朝練で、昼休みまでゆっくり話せない。

昨日の実力テスト、雅紀は大丈夫みたいで良かった。俺もクラス委員ポジはキープできるだろう。別にやりたくないけどね。

そもそも委員なんて体のいい雑用係なのに、学年末試験の成績で決まるなんておかしいだろ。
今だって貴重な昼休みに、空腹を抱えたまま、集めた提出書類を職員室に届けている。




雅紀が食堂の座席を確保して待ってくれているはず…。

「翔チャン!ここ、ここ!」

おや?松本も一緒か。
ということは、隣は例の編入生だな。
やっと顔を拝めるのか。

「編入生の二宮くんです。」
「初めまして。にのみ……」

フリーズされた。

うわ、カワイイ! 雅紀とは違うタイプ。

「櫻井です。…こちらこそよろしくな。」

ギリギリ格好つけて挨拶を返す。


あまりにも可愛すぎて、俺がフリーズしそうだ。穴があくほど見つめてしまう。
雅紀と同系色の長めの茶髪、色白な頬に飴色の瞳…。あれ、この瞳どこかで…。


見つめすぎて目をそらされた。




ほんのり染まる横顔に問いかける。

「ねえ君、妹さんいない?」
「「「!?!?」」」

「ニノは一人っ子ですよ。」
「翔チャン、何言ってんの?」

なんでお前らが答えてんだよ。
本人は赤くなって俯いてしまった。

「翔チャン、ナンパしてるみたいだよ。」
「そうですよ、ニノがびっくりして困ってますよ。」

「悪い、悪い。忘れてくれ。
 腹減ってアタマおかしくなったんだ。」

みんなで大笑いしながら食事した。
彼もニコニコしてて、ホッとした。