まじめに生きてきたつもりです。

むかし「地獄と極楽」という子ども向けのマンガがありました。
近所のお寺さんに置いてあるのを読みました。
悪い事をした人が死んだ後にどれだけ苦しむか、どんな報いを受けるのかがわかりやすく描かれています。
動物をいじめた人は大きな獣に食べられるとか、火の不始末を起こしたり放火したりした人は灼熱地獄で焼かれるとか。
逆に生前にいい行いをした人は極楽に行って、毎日満ち足りた生活を送ると描かれていました。

その地獄の内容がすごく怖くて、小さかった私は「地獄はイヤだ!」と思いました。
絶対に悪いことはしない、地獄には行かない!と心に決めました。

だから小学校の頃からまじめな子どもだったと思います。
順番は守るしカンニングもしないし友達によって接する態度を変えたりもしない。
そんな考えが幼い頃から根付いていたためか中学や高校に進学してもまじめでした。
無賃乗車も万引きも未成年飲酒も喫煙もしない。
電車やバスではお年寄りや妊婦さんに席を譲るし、島で迷っている人がいたら目的の場所まで案内する。
大学のサークルの新歓でお酒を断った時なんて「まじめすぎでしょ!」と笑われました。

大学を卒業して地元の小さな企業に就職してからもコツコツがんばりました。
手を抜けるなと思う仕事があっても全力でやっていたし、ノルマのある仕事は必ず達成していました。
おかげで人事査定がよくて年齢の割に多めの賞与を頂きましたし、結婚して退職する時は強く引き止めてもらいました。

だから私は、人生まじめに頑張っていれば報われるんだと思っていました。



でも違いました。

まじめにコツコツがんばってきたはずの私は、赤ちゃんを2人、お腹の中で亡くして心を病んで引きこもっています。
不育症かもしれないしこのまま一生赤ちゃんを抱けないかもしれません。
関係ない他人を妬み、ひがんで、幸せな家族連れを見てショックを受けるような醜い人間になってしまいました。


それともまじめに生きていたつもりだったのはただの思い込みで、本当はすごく悪い事をしていたのかもしれません。
無意識に誰かを傷つけたとか。

思い返せば今より若かった頃は何も考えずに「お子さんはいらっしゃるんですか?」という質問を既婚の方にしていた気がします。
できないのかもしれないとか、お子さんを亡くされた経験があるのかもしれないとか、ろくに考えもせず。
世間話として「お子さんは?」と聞いていたと思います。
結婚したら子どもがいるのが当たり前という狭い視野の持ち主でした。


いま私が同じ質問をされたら嫌な気分になるんだろうな。
「2人いるはずだったんですけど2人ともお腹の中で死んでしまいました」と言いたくて、でもその場の雰囲気を壊したくなくて、曖昧にヘラヘラ笑いながら「いないんです」と答えると思います。
そしてその会話が終わったらズーンと落ち込んでしばらくメソメソしてしまうんだろうな。


そういうことを私は今までしてきた。
お子さんのいないご夫婦を不快にさせてきた。

だから今の私は、過去の私がしたことの報いを受けているのかもしれませんね。



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