前回からのつづきです。

 

あたたかいコメントやメッセージを寄せてくださる皆さん、本当にありがとうございます。

経験者の方からの言葉は何よりも救われます。

流産も死産も経験したことのある人にしかわからない悲しみがありますよね。

 

自身は流産・死産の経験がないという方へ。

もし身の回りに流産や死産をして悲しんでいる人がいたら、寄り添ってあげてください。

励ましの言葉は必要ないことが多いです。

むしろ悪気のない言葉に傷ついてしまうこともあります。

面倒くさくてごめんなさい。

ただ共感して、いっしょに悲しんであげてください。

できたら、名前や性別を聞いたり、おもちゃやお菓子を供えたりしてあげてください。

生きている赤ちゃんと同じようにしてもらえるのは嬉しいです。

 

***

 

火葬は死産から3日後の朝に行われることになりました。

 

火葬に立ち会ったのは、夫、義両親、私の両親、兄です。

みんなで骨壷やお花やおもちゃを持って病院にぴよちゃんを迎えに来てくれました。

 

助産師さんを呼ぶと、個室にぴよちゃんが運ばれてきました。

ぴよちゃんはやっぱり眠っているだけに見えました。

でも、2日前に見たときよりも顔色がくすんでいる感じがしました。

産まれた直後は赤紫で、その次の日は真っ白で、今は少し土気色。

なんだか表情まで変わって見えました。

 

義母と母は「やっぱりかわいいわぁ」と口々に言っては泣いていました。

兄もぴよちゃんを見て、頭をなでてくれました。

「お前に似てるなぁ!」と言ってもらえて嬉しかったです。

 

義父の顔を見るとダラダラと涙を流していました。

あんまり泣いているので驚いてしまったくらいです。

 

「息子を亡くして、孫まで亡くすなんて思わなかった」

 

その言葉に私も涙が溢れました。

あとから聞いたら、義母が長男を死産したことを思い出して、こみ上げてしまったんだそうです。

本当に申し訳ないことをしてしまいました。

はじめての内孫、しかも跡継ぎになる男の子であるぴよちゃんの誕生を、楽しみにしてくれていたのに…。

 

父も涙ぐんでいました。

「大変だったなぁ」と言って、お見舞いのお菓子や果物を持ってきてくれました。

嫁入り前、実家でよく食べていた好物ばかり。

父の気遣いが嬉しかったです。

 

夫は離れたところに立ってぴよちゃんの顔を見ないようにしていました。

本当は夫にもぴよちゃんを見てほしかった。

どんなふうに私たちに似ているか知ってほしかった。

でも、夫は繊細な人です。

ぴよちゃんの死に顔を見たら立ち直れなくなるかもしれない。

だから無理強いはせず、夫のしたいように任せました。

 

しばらくぴよちゃんを囲んでおしゃべりしていると先生が入ってきました。

先生は深々と頭を下げて謝罪の言葉を述べました。

だけど誰も先生を責めませんでした。

父が「誰も悪くなかったよな」と言葉をつまらせました。

 

今回の件について先生がみんなに説明をしてくれました。

たしかに先生はミスをしたかもしれません。

でも、最後まで誠意ある対応をしてくれたと思います。

だから私たち家族は先生を恨むことはありませんでした。

 

先生のお話が終わると、ベテラン助産師さんと若い助産師さんが入ってきました。

2人とも本当はお休みの日なのに、わざわざ折り鶴を持ってきてくれたんです。

「時間が足りなくて、千羽なくてごめんなさい」と謝られました。

死産のあと、助産師さんみんなで折ってくれたそうです。

気持ちが嬉しくて涙が出ました。

 

ベテラン助産師さんが「よかったら手形と足形を取らない?」と提案してくれました。

母子手帳に、産まれた赤ちゃんの手形と足形をスタンプするページがあるんです。

私は「ぜひお願いします」と答えました。

 

若い助産師さんがスタンプ台を持ってきて、そっとぴよちゃんの手と足に押し付けました。

ベテラン助産師さんが母子手帳を開いて、手形と足形をていねいにスタンプしてくれました。

 

スペースが余ってしまう、小さな小さな手形と足形でした。

ぴよちゃんの成長の記録と、手形&足形とが残された、母子手帳。

数少ないぴよちゃんの思い出の品です。

ずっとずっと宝物にします。

私が死ぬ時にはいっしょに棺桶に入れてほしいと思っています。

 

ぴよちゃんの手と足をきれいにすると、先生がベッドからぴよちゃんを抱き上げて、母が持参したクーファンに寝かせてくれました。

クーファンは兄と私のおさがりです。

「孫ができたときのために」と、ずっと実家にとっておいてくれました。

籐で編まれた大きなかごで、白いカバーがかかっていて、持ち手にリボンがついているかわいいデザイン。

そこに寝かされた白い新生児服を着せられたぴよちゃん。

なんだかお人形のようでした。

 

義母がぴよちゃんの横に小さなくまのぬいぐるみを添い寝させました。

母が顔の横にダンボのにぎにぎを置きました。

義父、父、兄は一輪ずつお花を供えてくれました。

最後に先生が買ってきてくれたお花を供えて、ぴよちゃんの見送りの準備が終わりました。

 

「ぴよちゃん、ありがとうね。

みんなが見ててくれるから、安心して行ってね。

ちゃんと産んであげられなくてごめんね。

大好きだよ。じゃあね、バイバイ」

 

ぴよちゃんのほっぺたにキスをしてお別れしました。

本当はもっとたくさんおしゃべりしたかった。

でも火葬の時間が迫っていました。

 

クーファンに寝かされたぴよちゃんが部屋を出ていきました。

泣き崩れる私を2人の助産師さんがなぐさめてくれました。

 

そのあと朝ごはんが出されましたが、とても食べる気分になりませんでした。

だって今ごろぴよちゃんは熱い思いをしているのに。

あんな小さな体で、ひとりぼっちで遠い遠い天国に行かなきゃいけないのに。

私だけのんきにごはんを食べるなんて、とてもできない。

そんな気持ちでした。

父が持ってきてくれたお菓子をひとくちだけかじりました。

 

 

お昼前に夫から電話がかかってきました。

火葬が無事に終わったこと、お骨がたくさん残ったことを知らせてくれました。

 

お骨が残ってよかった。

だけどもうぴよちゃんの寝顔は見られないんだな。

ほっぺたにさわることも頭をなでることもできないんだ。

ぴよちゃん、熱かったかな。

あんなに小さいのにかわいそうに。

ぴよちゃんはちゃんと天国に行けたかな。

天国で、お義母さんの息子さんに会えてるといいな。

 

ホッとしたのと悲しいので、また泣きました。

 

 

つづく