前回からのつづきです。

 

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死産後に必要な手続きについて説明を受けた夫が個室に戻ってきました。

 

妊娠12週以降の赤ちゃんを死産した場合は「死産届」を役所に提出しなければならないとのこと。

死産届を出した赤ちゃんは、戸籍には掲載されません。

 

私はてっきり、ぴよちゃんは私たちの長男として戸籍に載せられるものだと思っていました。

手続きにあたって名前をつけなきゃいけないな…と考えていました。

 

でも私たちが望む望まないにかかわらず、ぴよちゃんは戸籍に載らない。

この世界にぴよちゃんという息子がいた公的な証は残りません。

(出産後に赤ちゃんが死亡してしまった場合には赤ちゃんの名前と「出生届」「死亡届」が必要になるそうです。この場合は戸籍に載せられるそうですが、2つの書類を同時に提出するのもつらすぎますね…)

 

悲しくてまた涙が出てきました。

ぴよちゃんは死んでしまっても私たちの長男なのに…。

せめて戸籍に載せてあげたかったです。

 

もろもろの手続きはすべて夫がしてくれることになりました。

本当は私もついていきたかったのですが、死産届には7日間という提出期限がさだめられています。

私の入院期間がどうなるかまだわからなかったので、夫に任せました。

 

その他、葬儀社を決めたり、火葬場に連絡をしたりなど、しなければならないことは多かったです。

ぴよちゃんが生きて産まれていたら、出生届を出したり名付けに迷ったり、必要なものの買い出しをしたりするのに忙しいはずだったのに…。

産後はじめての夫の仕事が悲しいことばかりで、本当に申し訳ない気持ちになりました。

 

 

夫と義母と母は午後の面会時間いっぱいまで部屋にいてくれました。

みんな自営業で仕事が忙しいのに私のために時間を割いてくれて嬉しかったです。

 

3人が帰って日が暮れ始めると途端に心細くなりました。

1人でいると言いようのない不安に襲われます。

そわそわして、いてもたってもいられない。

痛む体を引きずってトイレに行ったり、窓を開けて換気してみたり。

夫が持ってきてくれた本を読んでみるけど集中できなくて内容が頭に入ってきません。

「何かしなければ…でも何をすればいいのかわからない…」という不安感に苛まれて心臓がバクバクします。

後から考えれば、これもパニック発作の初期症状だったと思います。

 

とにかく部屋にいるのが嫌で廊下に出て少し歩きました。

会陰切開の傷が痛んでフラフラします。

でも、広い廊下に出ただけで不安感はだいぶマシになりました。

 

しばらく廊下の手すりにつかまって立っていると、赤ちゃんを抱いたお母さんがこっちに向かって歩いてきました。

赤ちゃんはフニャフニャとか細い泣き声を上げています。

眠くてぐずっているのをお母さんがお散歩しながらあやしている感じでした。

 

「あっ!あの赤ちゃん生きてる!」と、当たり前すぎることがとても新鮮に思えました。

 

自分でも意外だったのですが、赤ちゃんとお母さんを見ても、この時は悲しくなりませんでした。

むしろなんだか神聖なものを見たような気持ちになって元気が出たくらいです。

「すごいなぁ!産まれたばかりの赤ちゃんの泣き声ってあんなふうなんだ!お母さん大変そうだなぁ、がんばれ!」

そんな気持ちでついジッと見てしまいました。

 

気が付いたら不安感はなくなっていて、動悸もおさまりました。

赤ちゃんパワーはすごいなと思いました。

 

パニックがおさまると傷の痛みがさっきより鮮明になりました。

ただ立っているだけでもジクジクして痛いです。

歩くと下着が傷口に擦れて叫びそうなくらい痛くて、ヨロヨロの足取りで部屋に戻りました。

 

 

ナースコールして痛み止めをもらい、薬を飲んだ後に眠気を感じて眠りました。

少し休憩するだけのつもりだったのですが、破水してからここまでろくに寝ていなかったので、目が覚める頃には深夜になっていました。

たぶん10時間くらい眠っていました。

 

起き上がると胸がパンパンに張っていて驚きました。

妊娠中にずいぶん胸が大きくなったなぁとは思っていましたが、カチカチに硬くなるのははじめてです。

中に石が入っているかのような手触り。

押すとジンジン痛みますし、熱もかなりこもっていました。

 

ぴよちゃんは死んでしまったけど、体は赤ちゃんが生きていると思いこんでいて、おっぱいを出す準備をしていたんですね。

 

ナースコールをすると若い助産師さんが来てくれました。

母乳を止めるお薬をもらって飲みましたが、張りはしばらくおさまりませんでした。

 

ぴよちゃんが生きてたら、今ごろおっぱいをあげてたのかな…

あげる相手のいないおっぱいが出るなんて切ないな…

 

そんなことを思うとまた涙が溢れました。

戸籍に載らない、おっぱいもあげられない、ぴよちゃん。

ぴよちゃんの寝顔のような死に顔を思い出して、夜が明けるまで泣き続けました。

 

つづく