前回からのつづきです。

 

たくさんのアクセス、「いいね」、ありがとうございます。

多くの方に読んでもらえて嬉しいです。

ぴよちゃんという息子がいたことを知ってもらえるのは救いになります。

 

***

 

先生もベテラン助産師さんも夜勤だったので夜が明けると退勤されました。

私のお産に立ち会ってくれた人々が院内からいなくなってしまうことが不安でした。

 

朝ごはんを出されても食べる気になれませんでした。

お腹はすいているのですが食欲がわかないのです。

それでも体の回復のために何か食べないといけない。

ほうれん草のおひたしを無理やり口に入れ、お茶で流し込みました。

デザートのゼリーは比較的食べやすかったです。

ほうれん草とゼリーじゃお腹を満たすには心もとないけど、食べないよりマシだと言い聞かせて無理やり飲み込みました。

 

何をするでもなくお昼までボーッと過ごしました。

頭の中をよぎるのはぴよちゃんのことばかり。

 

妊娠中の経過は順調でした。

感染もなければ尿糖も引っかからず、貧血にもならず、足のむくみもなし。

出血はあったけどポリープからだったから特に問題があったとは思えず。

 

それなのにどうして破水してしまったんだろう?

ぴよちゃんは心臓が止まるまで苦しんだんだろうか?

ぴよちゃんは私を恨んでいるのかな?

 

ぴよちゃんの眠っているような顔を思い出すと涙が溢れてきます。

誰もいない部屋でさめざめと泣きました。

 

 

お昼すぎ頃に夫と義母と私の母が病院にやってきました。

母も義母も私の顔を見たとたんに号泣。

私もそれを見て号泣。

泣くまいと思っていたのに、見慣れた顔を見たらホッとして大泣きしていまいました。

 

「みやこちゃん、つらかったね。

ごめんね。ごめんね。

もっとゆっくりさせてあげればよかったね」

 

義母は妊娠中の私に仕事をさせていたことに罪悪感を抱いているようでした。

たしかに夫の家業はそれなりの重労働です。

でも妊娠中はかなり負担を減らしてもらっていました。

つわりが辛い時は休んでいたし、お腹が張れば横になっていました。

妊婦がしてはいけないような無理をした記憶はないです。

 

「そんなことないよ!

充分ゆっくりしてたよ、お義母さん謝らないで。

私こそごめん、赤ちゃん死なせちゃってごめん!

お義母さん、孫を楽しみにしてくれてたのに!」

 

私も泣きながら謝りました。

母が私達を見て言葉も発せずにオイオイ泣いていました。

 

私がぴよちゃんを死なせてしまったばっかりに、母も義母も悲しんでいる。

私と夫だけで済むことではないとあらためて自覚してショックでした。

ここにはいないけど父も義父も、兄も、赤ちゃんを楽しみにしてくれていた友達たちも悲しむ。

 

私がぴよちゃんを殺してしまった。

私のせいでみんなが悲しむ。

考えたら涙が止まらなくなって過呼吸のようになってしまいました。

 

しばらく女3人でわーわー号泣しました。

夫も泣いていました。

本当に個室を取ってもらってよかったと思います。

 

 

落ち着く頃に、義母がこんなことを言いました。

 

「赤ちゃん亡くすって、ほんとにつらいよね。

私もね、もうずっと昔だけど…

長女が産まれる前に、1人お腹の中で亡くしたの」

 

私も夫も母も「えっ!?」と声をあげました。

義母と私の母は島出身で長い付き合いなのですが、母も、夫すらも初耳だったようです。

 

「結婚してすぐ妊娠して、赤ちゃんほしかったから、すごく嬉しくてね。

お腹を蹴られるのもわかるくらい大きくなってくれたの。

でもあるとき胎動がわからなくなっちゃって…

病院に行ったけどもう手遅れって言われてね…。

無理やり出す処置をしたら、待望してた男の子で…

お姑さんに、ひどいこと言われたりして……」

 

義母はそこまで話してくれて、また涙を流しました。

私も話を聞きながら泣きました。

 

夫は末っ子で、上に3人の姉がいます。

3人とも夫とは少し歳が離れており、それぞれお嫁に行って島を出ています。

義母は4人目の妊娠でようやく男の子を授かったのです。

 

死産の話を聞くまで、きっと義母は跡継ぎを切望されて、男の子を授かるまで頑張ったのだろうと思っていました。

でも今は、最初に亡くした男の子が戻ってきてくれるのを待っていたのかな…と思います。

 

私の母が義母の背中をさすっていました。

またこみ上げてきて、3人で大泣きしました。

 

「今回のこと、みやこちゃんはなんにも悪くないから。

自分のこと責めたらだめよ!

赤ちゃん残念だったけど、絶対にまた帰ってきてくれるからね。

私だってもうトシだったけどちゃんとこの子(夫)を産めたんだから。

今は体を休めることだけ考えるのよ!」

 

義母は涙ながらに力強い言葉をくれました。

私を励ますため、秘めていた悲しい話をしてくれた義母の優しさが嬉しかったです。

 

「あんたどうせ眠れてないでしょ?

ホラこれ持ってきたから…

あと食べられそうなものも買ってきたよ。

なんかほしいものない?

買ってくるからなんでも言って」

 

母は私が実家で使っていた抱きまくらを持ってきてくれました。

中学の頃から愛用していて、もうクタクタなのですが、抱くと落ち着いて眠れるんです。

それからスーパーの袋いっぱいにゼリーやプリンやお菓子や飲み物や雑誌。

母らしい心遣いがあたたかかったです。

 

夫も入院グッズをきちんと揃えてくれました。

読みかけの文庫本や夫の携帯ゲーム機も入れてくれていました。

スマホがなくて時間を持て余していたので助かりました。

 

「みんなありがとう。

ほんとにごめんね…」

 

私が言うと、みんな口々に「謝らないで」と言って泣きました。

本当に、ずっとずっと泣いていました。

 

 

つづく