更新が遅くなってすみません。

 

たくさんの「いいね」ありがとうございます。

続きを書く励みになります。

少しでも、私と同じような悲しい思いをする妊婦さんが減りますように。

 

***

 

タクシーで病院に到着し、夜間外来の入口を通って産科に行きました。

非常灯と夜間灯しか点灯していない病院に入るのははじめてです。

シーンとした暗い廊下に私と夫の足音が大きく響きました。

昼間の、患者さんやお見舞い客や看護師さんで賑わっている病院とは別世界のように思えました。

 

「すみません、さっき電話したみやこです。

破水してしまったみたいで…」

 

「お待ちしてました。

じゃあ、内診室に入ろうね」

 

夫を待合室のベンチに残して私と助産師さんだけ内診室へ。

 

破水は続いていたみたいで、あてていたナプキンがビッショリと濡れていました。

生理2日目の夜でも使用済みナプキンはこんなに重くならないよ…というくらい、水分を吸ってズッシリと重くなっていました。

内診台に登る時も太腿を羊水が流れ落ちる感覚がありました。

 

「……完全に破水してるね。

このままだと感染症の危険性があります。

放っておくと陣痛がきてしまう可能性もあります。

みやこさんは、今27週だよね?

赤ちゃんが出て来るにはちょっと早すぎる時期だね。

詳しくは先生に診てもらいましょう」

 

助産師さんの言葉は、そんな感じだったと思います。

間違ったことを書いていたらすみません。

頭がものすごく混乱していたのでよく覚えていないんです。

私は「はい…。はい…」と返事をするので精一杯でした。

 

「タイミングが悪いんだけど、今お産が入ってるの。

先生の手が空き次第すぐに来てもらうようにするから、

もうちょっとだけ待ってね」

 

「あの…

陣痛がきてしまったら、どうなりますか?」

 

グルグル混乱する頭でどうにか絞り出した質問。

助産師さんは、言葉を選びながら、答えてくれました。

 

「張り止めの点滴をするから、陣痛はこないよ。

でも…万が一の話だけど、

陣痛がきて、赤ちゃんがでてきちゃったら…

早産ということになるね」

 

早産。

その言葉に、首を絞められたような気分になりました。

よくないことが起ころうとしている。

そんな予感めいた感覚に全身を襲われました。

 

「早産したら…

赤ちゃんは、生きられるんですか…?」

 

質問する自分の声が震えていたのをよく覚えています。

手も、指の1本1本がブルブル震えていました。

 

「27週だと、生存率はかなり高いよ。

だけど、なんらかの後遺症が残る可能性があるの」

 

「後遺症…」

 

後遺症って、どんな症状ですか?

 

本当はそう聞きたかった。

でも、聞いたらそれが本当になってしまう気がして、質問できませんでした。

 

「大丈夫。

みやこさんの赤ちゃん、いま頑張ってるからね。

みやこさんも赤ちゃんを信じてあげて!」

 

助産師さんはそう言って私の手を握ってくれました。

助産師さんの手はあたたかくて力強くて、少しだけ安心できました。

 

「それじゃあ、先生を呼んでくるから。

1人で待つのは不安だよね。

旦那さんに部屋に入ってもらおうか?」

 

「はい…お願いします」

 

助産師さんが内診室を出ていって、入れ違いで夫が入ってきました。

夫は不安そうな表情で「どうだった?」と聞いてきました。

 

「…やっぱり破水してるって。

このままだと、感染症とか…

早産とかの可能性もあって…

…もし産まれちゃったら、

後遺症が残るかもしれないって…」

 

夫に説明しながら、ガマンしていた涙がボロボロこぼれました。

赤ちゃんを信じてあげなくちゃいけないのに。

私ががんばらなきゃいけないのに。

不安で不安で、怖くて怖くて、涙が止まりませんでした。

 

夫は「大丈夫だよ、きっと大丈夫」と言って肩をさすってくれました。

私は現状を言葉にしたことで状況を飲み込んでしまい、子どもみたいに泣きじゃくりました。

 

「どうしよう…ぴよちゃん産まれて後遺症残ったらどうしよう!?

なにか障害とか抱えちゃったら…私のせいだー!」

 

胸の中の不安を吐き出しながら泣きわめく私を、夫が必死でなだめていました。

先生が来るまで、私はずっと泣き続けました。

 

いま思い返せば、障害が残るくらいなんでもないなって思います。

後遺症があったとしても生きて産まれてきてくれればよかったのにって…

生きているぴよちゃんを、この手に抱いてみたかったです。

 

 

つづく