更新が遅くなってすみません。

やっと文字に起こすことができそうなので、ゆっくりになると思いますが、書いていきます。

 

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27週と5日の夜。

 

この頃、私はやや頻尿ぎみになっていました。

子宮が膨らんで膀胱が圧迫されるのが原因だそうです。

この日の夜も食後にトイレへ行き、入浴後にトイレに行き、寝る前にもう一度トイレに行きました。

3回とも特に異変はなく、出血がなくなったことに安心していました。

 

くわしく覚えていないのですが22時半頃にベッドに入ったと思います。

尿意を催して目が覚めたのは23時半でした。

スマホで時間を確認し、「1時間しか眠れてない…」と少しげんなりしたのを覚えています。

 

夫を起こさないようにそっとベッドを抜けてトイレへ。

尿意のわりにほとんど出ませんでした。

トイレットペーパーで拭くと、薄いピンクの色が……。

心臓が止まるかと思うほどギクッとしました。

 

また出血だ…!

ポリープは取ったはずなのに、なんで!?!?

 

パニックになりかけた瞬間、キューーーッとお腹が張りました。

昼間の張りよりもかなり強かったです。

思わず「いたたたた…!」と声が出てしまいました。

 

とりあえず夫を起こそう!

そう思って立ち上がった瞬間、お腹の中でゴムボールが破裂するような感覚がありました。

パンッ!と弾けるような感じです。

同時に、バシャーッ!!と大量の水が股の間から流れ出しました。

 

えっ…!?

いま、破水した…!?

 

生産期が37週以降だというのはテキストで読んで知っていました。

初産婦の場合は40週を超えてもなかなか産気づかなくて、予定日をオーバーしてから産まれることも多いと聞いたことがありました。

 

この時の私はまだ27週と5日。

いくらなんでも早すぎるというのは、否が応でも自覚せざるを得ませんでした。

 

水は透明だったと思います。

血は混ざっていませんでした。

パジャマとパンツとスリッパはびしょ濡れになっていて、あわてて全部脱ぎ捨てました。

トイレに常備している夜用ナプキンを手で股にあてて寝室へ。

 

「やばい!破水した!病院行かなきゃ!!」

 

私は絶叫していました。

飛び起きた夫が「えっ!?なんで!?」と驚いていました。

 

「わかんない…。でも早すぎる!

このままじゃぴよちゃんがやばいと思う。

とりあえず病院に電話して!!」

 

私はタンスからパンツを出して履き、ナプキンをあてなおしました。

その上からスウェットを履いて、夫のスマホをひったくりました。

 

鳴り響くコール音。

なかなかつながらない…。

 

ていうか、夜間もこの番号にかけていいんだっけ?

夜間は専用の番号があるんじゃなかったっけ?

なんで誰も出ないの?誰もいないの?

もしかして助産師さんも先生も全員お産に行ってて受付が無人だったりする??

 

頭の中でそんなことを考えました。

電話がつながるまで実際は1分くらいしかかかってないと思います。

でも、この時の私には5分にも10分にも感じられました。

 

「はい、○○病院産科です。

どうしましたか?」

 

電話に出たのは、私を受け持ってくれたことのある助産師さんでした。

声と喋り方でわかったんです。

優しくて思いやりのある人だと知っていたのでそれだけで少しホッとしました。

私は「とにかく冷静にならなくちゃ」と思って、深呼吸をしてから話しました。

 

「みやこです。

たった今、破水してしまいました。

まだ27週5日なんです。

どうしたらいいですか?」

 

「えっ…!

それは、よくないですね。

みやこさん、島に住んでるよね?

今すぐ来られますか?」

 

「今すぐですね…

わかりました。どうにかします。

1時間以上かかりますけど、向かいます!」

 

「ナプキンとかタオルをあてて来てね。

できたら旦那さんも一緒に来られる?

落ち着いて、事故を起こさないようにね」

 

「はい、気をつけます」

 

そんな会話を交わして電話を切りました。

おろおろしている夫に「船の手配して!」と声をかけました。

時間は深夜。とっくに船の最終便は終わっています。

でも、この島には個人で船を所持しているお宅が何件かあるので、お願いすれば本島まで乗せてもらえるのです。

 

夫は寝室を飛び出して電話をかけに行きました。

私は保険証や診察券やスマホをカバンに詰め込んで、念のためパンツとスウェットの間にタオルを挟んで、部屋を出ました。

 

「Sさんが船出してくれるってよ!」

 

夫が言いました。

すでに寝ていたお義父さんが起きてきて「どうしたぁ?」と声をかけてきました。

 

「いま破水してしまったので病院に行ってきます。

お義母さんにも伝えておいてください。

うちの実家にも連絡お願いします」

 

少しでも時間を取られるのが嫌で、それだけ言って家を飛び出しました。

夫が港まで車を飛ばしてくれました。

まだSさんの姿はありません。

 

遅い!

何してるの!?

 

乗せていってもらえることをありがたく思わなくてはいけないのに、私は焦燥感からイライラして、何回もSさんへの文句を夫にぶつけました。

夫は深夜も営業しているタクシー会社を探して片っ端から電話をかけていました。

どうにか港に来てくれるタクシーが見つかって、そこからはひたすら無言。

夫もかなり焦っていたと思います。

何もせず待つことに耐えられず、私はスマホでこの時期の破水について検索していました。

 

感染症の危険性。

心音低下。

帝王切開。

後遺症が残ることもある…。

 

悪い情報ばかりが目について、涙が溢れそうになりました。

でもまだぴよちゃんがダメになったと決まったわけじゃない。

ぴよちゃんはきっとお腹の中でがんばってくれている!

私がしっかりしなくてどうするんだ!!

…そんなふうに、自分で自分を励ましました。

 

10分くらい待って、Sさんが軽トラでやって来ました。

 

「おお、悪い悪い、待たせた。

大丈夫かぁ?」

 

のんきな感じで現れたSさんに再びイライラ…

Sさんその節はすみません。

でもこの時は自分とぴよちゃんのことで頭がいっぱいでした…

 

「夜分すみません。

妻が破水しちゃって、大丈夫じゃないかもしれないです…。

本島に行ってもらえますか?」

 

「そりゃ大変だ。

んじゃあ飛ばすから、乗りな」

 

車を降りてSさんの船に乗り、真っ暗な海を走りました。

お腹が定期的にキューッと張っていました。

この時はまだ強い胎動が感じられました。

私はお腹の上からぴよちゃんをなでて、「がんばれ、がんばれ…」と声をかけ続けました。

 

港に着くとすでにタクシーが待機していました。

Sさんにお礼を言ってタクシーで病院へ。

 

ちなみにこの時、私はSさんの船にスマホを落としていたみたいです。

気付いたのは病院に到着して入院着に着替えてからでした。

それが今回の件で私の悲しみをかなり引きずることにつながります…。

 

続きます。