映画/『ビルマの竪琴』 | みやのすけの映画倉庫/『ゴジラVSコング』への道


2010/11/18シネマヴェーラ渋谷にて
1956年1月21日公開
(第一部 望郷篇)
1956年2月12日公開
(第二部)
監督:市川崑
出演:三国連太郎、安井昌二、西村晃、浜村純、北林谷栄

1945年、ビルマからタイ国境へ敗走する井上部隊。
井上隊長(三国連太郎)は音大出身で、部隊に合唱を教えており、井上部隊は楽しいにつけ悲しいにつけ歌うユニークな部隊です。
また、部隊の水島上等兵は、見よう見まねでタイの竪琴(サウンというのだそうです)を覚え、なかなかの名手です。

ある部落で英軍に包囲された井上部隊が「埴生の宿」を歌い、それに合わせてイギリス兵たちが「Home Sweet Home」を歌い、二カ国語の合唱が月夜に響き渡るシーンが美しいです。

結局、井上部隊はそこで敗戦を知り、イギリス軍の捕虜になります。

しかし、日本敗戦を信じず、通称「三角山」に立てこもって戦い続ける部隊があり、英軍の要請を受けた井上隊長は部下の水島上等兵を説得に向かわせます。
水島の必死の説得も虚しく部隊は徹底抗戦を主張し、英軍の激しい集中砲火を浴びて全滅。
この集中砲火のシーンがリアルで、凄まじいです。
1950年代までの日本映画には、戦場を描いたシーンにこうした生々しさがありますね。

辛うじて生き延びた水島は僧侶に変装し、ムドンの捕虜収容所に移送された井上部隊を追いますが、その途上で彼が見たのは死屍累々の日本兵。
ゆったりと流れる雄大なメコン、その岸にうず高く積まれた日本兵の屍が無残です。



スコールの中、照りつける太陽の下、ひたすら歩く水島の足をオーバーラップで捉えたシーン、ビルマの厳しい日差しを表現したコントラストの強い映像、収容所の鉄条網を伝い落ちる雨粒、歌う兵隊たちのクローズアップを繋げたモンタージュなど、市川崑の映像感覚は鋭いです。

水島は残された日本兵の遺体を弔うため、ビルマの地に残ることを決意。
収容所の仲間たちの前に現れ、別れの言葉も語らず竪琴で「仰げば尊し」を弾くシーンが感動的です。


美しい歌の数々や竪琴の音色、現地の民族音楽と共に、伊福部昭のうねるような祈り・鎮魂のテーマ曲が心を揺さぶり、素晴らしいですね。

市川崑監督入魂の美しく力強い映像詩であり、反戦映画の名作です。

ベネチア国際映画祭サン・ジョルジョ賞受賞。
アカデミー外国語映画賞ノミネート。