映画/『ハワイ・ミッドウェー大海空戦 太平洋の嵐』 | みやのすけの映画倉庫/『ゴジラVSコング』への道



1960年4月26日公開
東宝
監督:松林宗恵
特技監督:円谷英二
出演:三船敏郎、鶴田浩二、池部良、小林桂樹、藤田進、田崎潤、夏木陽介、佐藤允、上原美佐、三益愛子、志村喬、榎本健一

第二航空戦隊空母飛龍搭乗員北見航空士(夏木陽介)の目を通じて描かれる真珠湾攻撃からミッドウェー海戦までの連合艦隊の戦い。
脚本は橋本忍、国弘威夫。

さて、「ハワイ・マレー沖海戦」は特撮が大きな話題となったとはいえ、当時のニュースフィルムに加えて撮影には実機も使用され、意外にも特撮の比重は低いのです。

一方で戦後製作のこの作品はは、出てくる飛行機や艦船は全てといっていいほど特撮。
東宝はこの映画のために、撮影所に1万平方メートルの特撮用プールをつくり、美術スタッフは漁船のエンジンを搭載して実際に海上を航行できる全長13メートルの空母「飛龍」のミニチュアを製作しています。
そういった点で、この作品は日本映画史上最も贅沢な特撮映画といえるでしょう。




キャストもまた贅沢ですが、物語は北見航空士のモノローグを中心に展開しているのが、功を奏しています。
真珠湾の大勝利から遠くインド洋への遠征、機動部隊の連勝につぐ連勝に高揚していく心理、そして惨敗のミッドウェー海戦で知る戦場の無慈悲さ。



北見の母(三益愛子、うまいビックリマーク)と新妻(上原美佐、美しいビックリマーク)が「銃後」の描写としてサラッと、しかし非常に効果的に使われています。




見せ場は専ら特撮シーンに比重が置かれており、演技の比重が低いのですが、松林監督の演出はツボを心得ており、多彩なスター各々からその持ち味を巧みに引き出してドラマ部分も退屈させません。

また、監督本人に海軍従軍経験があるせいか、全体に落ち着いた客観的タッチが貫かれており、その点で作中の戦場描写には臨場感があります。
近年の絶叫&号泣型エセ反戦映画とはこういう所が全く違うのですね(もっとも20年後の「連合艦隊」では松林監督も絶叫&号泣型になってましたが汗)。

特撮による戦争スペクタクルの白眉ともいえる作品ですが、ラストの無常感も忘れがたい傑作です。