相続の手続き期限一覧|やることリストと優先順位

家族が亡くなった直後、「相続手続きには何をすればいいのか」「期限はいつまでなのか」と悩んでいませんか。相続手続きには法律で定められた期限があり、期限を過ぎるとペナルティが発生したり、権利を失ったりする場合があります。この記事では、相続発生後の手続き期限を一覧で解説し、3ヶ月・4ヶ月・10ヶ月の期限別にやることをリスト化します。相続手続きの流れと優先順位を理解することで、期限切れによるトラブルを防ぎ、スムーズな相続を実現できます。
相続発生直後(7日以内)にやること
相続が発生したら、まず7日以内に行うべき手続きがあります。死亡届の提出と遺言書の有無確認は、相続手続きの土台となる作業です。このセクションでは、相続発生直後に優先して行うべき手続きについて解説します。

死亡届の提出と火葬許可証の取得
死亡届の提出期限は、死亡の事実を知った日から7日以内です。死亡届の提出期限は戸籍法第八十六条で定められています。死亡届を提出しないと火葬許可証が発行されず、葬儀を執り行えません。死亡届は、死亡診断書と一体になった書類であり、医師から死亡診断書を受け取ったら速やかに市区町村役場へ提出する必要があります。
死亡届の届出先は以下の3箇所から選択できます。
- 故人の本籍地の市区町村役場
- 届出人の所在地の市区町村役場
- 故人が死亡した場所の市区町村役場
正当な理由なく死亡届を出さなければ、戸籍法第137条により5万円以下の過料に処されます。死亡届の提出後は、年金受給停止手続き(厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内)や世帯主変更届(14日以内)など、関連する行政手続きも忘れずに行いましょう。
遺言書の有無を確認する
遺言書の有無は、相続手続きの進め方を大きく左右します。遺言書の保管者またはこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を請求しなければなりません。遺言書が存在する場合、原則として遺言書の内容に従って遺産を分配します。
遺言書の種類によって検認の要否が異なります。
| 遺言書の種類 |
検認の要否 |
備考 |
| 自筆証書遺言(本人保管) |
必要 |
家庭裁判所での検認手続きが必須 |
| 自筆証書遺言(法務局保管) |
不要 |
遺言書情報証明書を取得 |
| 公正証書遺言 |
不要 |
公証役場で作成済みのため |
| 秘密証書遺言 |
必要 |
家庭裁判所での検認手続きが必須 |
検認が必要な遺言書に対して検認を行わないと、5万円以下の過料を科せられる可能性があります。遺言書を発見しても、封印されている場合は絶対に開封せず、家庭裁判所に持参して検認手続きを受けましょう。
3ヶ月以内の重要手続き
相続発生から3ヶ月以内には、相続放棄や限定承認の判断が必要です。被相続人に多額の借金がある場合、3ヶ月の期限を過ぎると相続放棄ができなくなり、借金を引き継ぐ可能性があります。このセクションでは、3ヶ月以内に行うべき相続手続きについて解説します。

相続放棄・限定承認の申述期限
相続放棄の期間は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月です。これは民法915条で定められています。相続放棄とは、被相続人の財産も借金も一切引き継がない手続きであり、家庭裁判所への申述が必要となります。
相続放棄・限定承認の手続きの要点は以下のとおりです。
- 申述先:被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
- 期限:相続の開始を知った日から3ヶ月以内(熟慮期間)
- 必要書類:相続放棄申述書、被相続人の戸籍謄本、申述人の戸籍謄本など
- 費用:収入印紙800円分+郵便切手代
期限を過ぎてしまうと、基本的に相続放棄をすることはできなくなり、自動的に単純承認(通常の相続をすること)したものとみなされてしまいます。3ヶ月以内に判断が難しい場合は、家庭裁判所において熟慮期間を伸長することができます。
相続人・相続財産の調査と確定
相続放棄や限定承認の判断、そして相続税申告のためには、相続人と相続財産を正確に把握することが不可欠です。相続人調査では、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本を収集し、法定相続人を確定します。戸籍収集には時間がかかるため、相続発生後すぐに着手することが望ましいでしょう。
相続財産の調査対象は以下のとおりです。
- プラスの財産:預貯金、不動産、有価証券、生命保険金、車両など
- マイナスの財産:借金、住宅ローン、未払い税金、保証債務など
財産調査の方法として、金融機関への残高照会、法務局での不動産登記簿の確認、信用情報機関への照会(借金の確認)などがあります。プラスの財産よりマイナスの財産が多い場合は、3ヶ月以内に相続放棄を検討する必要があります。
4ヶ月以内の手続き
相続発生から4ヶ月以内には、被相続人の所得税に関する準確定申告が必要となる場合があります。準確定申告は通常の確定申告とは期限が異なるため、注意が必要です。このセクションでは、4ヶ月以内に行うべき準確定申告について解説します。

被相続人の準確定申告とは
準確定申告とは、年の中途で死亡した人の場合は、相続人が1月1日から死亡した日までに確定した所得金額および税額を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税をする手続きです。通常の確定申告は翌年2月16日から3月15日までに行いますが、準確定申告は相続発生後4ヶ月以内という短い期限が設定されています。
準確定申告の手続きの要点は以下のとおりです。
- 申告義務者:相続人全員(連名で申告)
- 申告期限:相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内
- 提出先:被相続人の死亡当時の納税地を管轄する税務署
- 対象期間:1月1日から死亡日までの所得
準確定申告の期限を過ぎた場合、延滞税や加算税等の余分な税金の支払いが発生します。期限内に申告を完了させるため、相続発生後は速やかに準備を始めましょう。
準確定申告が必要なケース・不要なケース
準確定申告は全てのケースで必要なわけではありません。被相続人が生前に確定申告をする義務があった場合に、準確定申告が必要となります。
準確定申告が必要なケースは以下のとおりです。
- 被相続人が個人事業主であった場合
- 被相続人に不動産収入があった場合
- 被相続人の給与収入が年間2,000万円を超えていた場合
- 被相続人が2箇所以上から給与を受け取っていた場合
- 被相続人に株式等の譲渡所得があった場合
一方、以下のケースでは準確定申告は原則不要です。
- 被相続人が年金のみを受給し、年金収入が400万円以下であった場合
- 被相続人が会社員で年末調整が完了していた場合
ただし、被相続人に医療費控除の対象となる医療費がある場合など、申告によって還付が受けられるケースでは、期限後でも5年以内であれば還付申告が可能です。
10ヶ月以内の最重要手続き
相続発生から10ヶ月以内には、相続税の申告・納付という最も大きな手続きが控えています。相続税の申告期限は厳格に管理されており、期限を過ぎると延滞税や加算税が発生します。このセクションでは、10ヶ月以内に行うべき最重要手続きについて解説します。

相続税の申告・納付期限
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内に行うことになっています。相続税の納税期限も申告期限と同様「亡くなった日の翌日から10ヶ月以内」です。申告と納税の両方を10ヶ月以内に完了させる必要があります。
相続税の申告・納付の要点は以下のとおりです。
- 申告期限:相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内
- 申告先:被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署
- 申告義務者:遺産を取得した相続人全員
- 基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
申告期限の日が日曜日・祝日などの休日又は土曜日に当たるときは、これらの日の翌日が相続税の申告期限となります。10ヶ月という期間は長く感じるかもしれませんが、遺産分割協議や財産評価に時間がかかるため、早めに専門家へ相談することをお勧めします。
遺産分割協議書の作成
遺産分割協議書とは、相続人全員が遺産の分け方について合意した内容を書面にしたものです。遺言書がない場合、または遺言書に記載されていない財産がある場合に作成が必要となります。遺産分割協議書がなければ、不動産の名義変更や預貯金の解約ができません。
遺産分割協議書作成のポイントは以下のとおりです。
- 相続人全員の合意が必要(1人でも反対すれば成立しない)
- 各財産の取得者を明確に記載する
- 不動産は登記簿謄本に記載された表記で正確に記載する
- 相続人全員の署名・実印による押印が必要
- 印鑑証明書を添付する
遺産分割協議が相続税の申告期限までにまとまらない場合でも、法定相続分で申告・納税を行い、後日、分割が確定したら修正申告または更正の請求を行うことができます。ただし、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」を適用するためには、申告期限までに「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出する必要があります。
金融機関・不動産の名義変更
遺産分割協議が完了したら、預貯金の解約・名義変更や不動産の相続登記を行います。相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記をすることが法律上の義務になりました。正当な理由がないのに相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
名義変更手続きの概要は以下のとおりです。
| 財産の種類 |
届出先 |
主な必要書類 |
| 預貯金 |
各金融機関 |
被相続人の戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書 |
| 不動産 |
法務局 |
登記申請書、戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書、固定資産評価証明書 |
| 有価証券 |
証券会社 |
相続届、戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書 |
| 自動車 |
運輸支局 |
移転登録申請書、戸籍謄本、遺産分割協議書、車検証 |
2024年4月1日より前に相続が発生していた場合でも、施行日を起算点とし、そこから3年以内、つまり2027年3月31日までに相続登記を行う必要があります。相続登記を放置すると過料が科されるだけでなく、将来の売却や担保設定にも支障をきたすため、速やかに手続きを行いましょう。
期限を過ぎるとどうなる?ペナルティと対処法
相続手続きには法定の期限が設けられており、期限を過ぎるとさまざまなペナルティが発生します。特に相続放棄の期限と相続税申告の期限は厳格であり、期限超過による不利益は大きなものとなります。このセクションでは、期限を過ぎた場合のペナルティと対処法について解説します。

相続放棄の期限を過ぎた場合
相続があったことを知ってから3ヶ月の熟慮期間を過ぎると、相続放棄は認められません。相続人は、すべての財産と負債を相続することになります。被相続人に多額の借金があった場合、相続人が返済義務を負うことになります。
ただし、亡くなられた方が借金をしていたことを隠していたため、督促状が届いて初めて借金をしていたことを知ったケース等は特別な事情があると認められます。この場合、相続放棄の期間は「借金の存在を知った時から3ヶ月」になります。
期限が迫っている場合の対処法は以下のとおりです。
- 家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てる(期限前に行う必要あり)
- 弁護士や司法書士に相談し、例外的に認められるケースに該当するか確認する
- 後から借金が判明した場合は、判明した日から3ヶ月以内に相続放棄を申述する
熟慮期間内に相続財産の処分(売却や消費)を行うと、単純承認とみなされ相続放棄ができなくなるため、判断が決まるまでは遺産に手をつけないことが重要です。
相続税申告が遅れた場合の延滞税・加算税
申告期限を過ぎて申告書を提出・納税をした場合はペナルティとして「無申告加算税」や「延滞税」が課されます。相続税申告が遅れた場合のペナルティは複数あり、合計すると相当な金額になる可能性があります。
相続税のペナルティの種類と税率は以下のとおりです。
| ペナルティの種類 |
内容 |
税率 |
| 無申告加算税 |
期限内に申告しなかった場合 |
本税の15%~20%(税務調査前の自主申告は5%) |
| 過少申告加算税 |
申告額が少なかった場合 |
追加納税額の10%~15% |
| 重加算税 |
財産を故意に隠した場合 |
35%~40% |
| 延滞税 |
納付が遅れた場合 |
納期限から2ヶ月以内:年2.4%~2.9%、2ヶ月超:年8.7%~9.3% |
令和7年(2025年)の延滞税割合は、納期限から2ヶ月以内が年2.9%、2ヶ月を超えた期間が年9.3%です。延滞税は納付が遅れた日数に応じて加算されるため、申告期限に間に合わない場合でも、できるだけ早く申告・納付を行うことでペナルティを最小限に抑えられます。
まとめ:相続手続きは「3・4・10ヶ月」の期限を手帳に書き込む

相続手続きには複数の法定期限があり、期限管理が適切な相続を実現する鍵となります。本記事で解説した相続手続きの期限を整理すると、以下の5つのポイントに集約されます。
- 7日以内:死亡届の提出・火葬許可証の取得
- 3ヶ月以内:相続放棄・限定承認の申述(家庭裁判所への申立て)
- 4ヶ月以内:被相続人の準確定申告(所得税の申告・納付)
- 10ヶ月以内:相続税の申告・納付
- 3年以内:相続登記の申請(2024年4月から義務化)
相続手続きは複雑で専門知識を要するものが多く、期限に追われながら進めるのは大きな負担となります。特に相続税申告は財産評価や税額計算が難しく、専門家のサポートを受けることで正確かつスムーズに手続きを完了できます。相続発生後は早めに税理士や司法書士、弁護士などの専門家に相談し、期限に余裕を持って手続きを進めることをお勧めします。相続に関する疑問や不安がある場合は、初回無料相談を実施している専門家も多いため、気軽に問い合わせてみてください。