去年、夏が終わる頃に妹がカタログを見てチューリップの球根を注文した。

届いてみたら思ったより多かったので、少しお隣さんにおすそ分けしてから、勝手口の戸棚に入れておいた。

秋の終わり頃になったら、植えなくちゃ・・・と思っていたのにそのまま忘れてしまった。私は時々思い出して「妹は、もう植えたかな?」と思って・・・また忘れてしまった。


クリスマスもお正月も節分もひな祭りも過ぎて、ようやく春の便りが届く頃になって、妹に

「ねえ、チューリップの球根、植えた?」と聞いたら、妹は

「あ~~!!忘れてたぁ~!!どーしよーはてなマークはてなマーク」と焦りまくった。


おすそ分けしたお隣さんは、きちんと鉢に植えて玄関先に出してあった。

すでに元気な葉っぱを伸ばし始めている。

こんな時期になってから植えていいもんだろうか?

でも、放っておくわけにもいかないし・・・と球根に謝りながらプランターに植えてみた。

さて、どんなもんだろう?とハラハラしながら見守っていたら大地震がきて、せっかく埋めた球根は、土から放り出された。

ようやく潜り込んだ布団を、いきなり剥がされたみたいで、本当に気の毒だった。

もう一度埋め直して見守っていると・・・

チューリップは、遅れた時間を取り戻すべく、超スピードで成長を始めた。

とにかくグングン伸びる。

じっと見ていたら伸びるところが見えるんじゃない?


そして、とうとうツボミを付けた。

やれやれ・・・と安心したけど、妹は浮かぬ顔だ。

「お隣さんのに比べると、やっぱり元気がないわ。何となくヘンだ。」

という。

お隣さんのはチューリップのお手本という感じで、茎も葉っぱもキリッと真っ直ぐ立ち上がり、ツボミもふっくらとして、余裕の表情で花を開こうとしている。

でも、うちのチューリップは・・・


空をみる人-110420_155031.jpg
超スピードで伸びたツケが回って、今頃になって息切れしてるみたい。

葉っぱが、ザンバラ髪のように開いて、茎の長さもマチマチ・・・

「もう、あきまへん!限界だすわ。」

といってるようだ。


 本当にすんませんでした・・・

       チューリップ赤  チューリップ黄  チューリップ紫

チューリップというと子供がお絵かきする花、というイメージがあったけどターシャ・テューダーの庭に咲くチューリップを見て、目からポロポロうろこが落ちた。

ターシャ・テューダーについては、今やガーデニング好きの人なら知らない人がいないくらいの有名人。

アメリカの児童書を変えたといわれる絵本作家だけど、日本では歳をとってからのガーデナーとして知られているようだ。

57歳のとき、それまでの印税を全部つぎ込んでバーモント州マールボロの町はずれに30万坪の広大な土地を買い込んだ。長男が一人で、母親のために19世紀開拓時代の家を再現したという。

92歳で亡くなるまで、長い時間をかけてその土地を夢の花園に仕立てあげていったのだ。

NHKの特集で、彼女がコーギー犬や猫、鳥たちと暮らしながら、毎日草木の手入れをしているのを見た。

チューリップを植える場所は彼女が16年にわたって土の酸性度を測り、石灰などで調整し続けた結果、見事な花を咲かせるようになったのだ。

春の鮮やかな色彩に加えて、紫やピンクなど微妙な中間色の八重咲きの花もあり、何百というチューリップの花が見事に咲き乱れていた。


妹にこの話をしたら、

「じゅうろくねん!!」といって目をむいた。そして

「私はとってもムリだわ・・・」とため息をついた。


そうだよね。

2,3ヶ月の間に球根を植えるのを、すっかり忘れちゃうんだもんね。

         チューリップオレンジ  チューリップ紫  チューリップ赤

でも次の日・・・

垣根の外に一輪だけ頑張って咲いてるスミレを見つけた。

春が小さな贈り物をくれたような気がして、ちょっと嬉しかった。


空をみる人-スミレ.jpg
ターシャは、どんなこともどんな時も楽しみに変えてしまう。

「喜びは作り出すもの」

「幸せは心の持ち方にあるのだから」

この言葉が多くの人の心を捉えたのだろう。