名古屋駅前の弁護士の三輪です。
治療費、入院費などは、実際に支払う必要のある実費全額が認められますが、その必要性と相当性について争われることがあります。
このような場合として裁判上よく争いになるものとして症状固定後の治療費があり、これについて今回はお話をしたいと思います。
ここで「症状固定」とは、治療しても症状が改善しない状態のことといい、その時期を症状固定時といいます。
従って、症状固定時以降に治療をしても、症状は改善せず、費用が無駄となってしまうことから、加害者に負担させることは不相当であると考えられ、原則として請求が認められていません。
しかし、症状固定後でも症状の内容、程度、治療の内容により、症状の悪化を防ぐなどの必要があれば、「将来治療費」として認められることがあります。
またこのような「将来治療費」には、症状悪化を防ぐための医療行為のみならず、将来一定期間後に必要となることが予想される手術費用も含まれることがあります。
このような「将来治療費」が認められた例として、東京地判平成7年10月31日判決は、60歳女性会社役員の後遺障害(てんかん、9級につき)、症状固定後も将来にわたりてんかん予防と脳の悪化防止のため、抗痙攣剤の服用と年1回の脳波検査、MRI検査の実施が必要であるとして、抗痙攣剤年額10万9920円、脳波検査及びMRI検査費用年額10万円を平均余命24年間分について認められた例があります。
また、東京地判平成21年12月4日判決は、症状固定時60歳男性自営業兼給与所得者の頚髄損傷による後遺障害(四肢麻痺、四肢筋力低下、関節拘縮、排尿障害等、1級1号)について、被害者は退院後も、看護ステーション、ヘルプサービス等の援助を受けるものとして被害者の平均余命までの将来の諸費用月額9万円が認められました。
さらに、将来の手術費用が認められた例として東京地判平成17年11月28日判決があり、56歳女性主婦兼パートタイマーのかたが左大腿骨頸部骨折の傷害を受け、後遺障害(左股間接用廃、左足1cmの短縮、併合7級)が残存した事案について、10年毎に人工骨頭置換の再手術の必要があり1回につき100万円の手術費を要するとして、中間利息を控除して平均余命約31年間の将来の手術費用99万0803円が認められました。
このように脳損傷や脊髄損傷などの重度の身体麻痺の場合はリハビリ的な治療行為が、将来一定期間後に再手術が行う必要があるような事案では、症状固定後の治療費が認められる傾向があります。
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