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富士山登頂記(4)

ついに頭痛・吐き気という高山病に襲われた一行。

そうだ、俺には酸素ボンベがあるじゃないか!

ネタで買ってきた酸素ボンベを本気で吸ってみる。

おもいっきり吸う

酸素最高!

「おう、三輪、気が利くな!」

パーティーで廻し酸素吸入。

ネタのために購入した小さい酸素ボンベ、

あっという間に消費。

これが砂漠の水筒だったら、

確実に干からびて全員死んでます。

人生に計画性のない人間は、

酸素の計画的使用なんでできるわけがないのです。

しかしまぁ、酸素ボンベのおかげで、
なんとか生き長らえたのも事実。

8合目、9合目ともなると、いくら休憩しても、

登山再開して5歩でゼェハァ状態。

紅一点の同期の女子は、やはり体力の差か
遅れをとるようになってきた。

ただでさえ呼吸困難な状態なのに、
ハゲヅラでさらに皮膚呼吸も困難な状態に
自ら追い込んでいる後輩も遅れてきた。

体力を吸い取る呪いのアイテムを
数多く着用していたバンドマンは、途中で装備解除。

ロック魂、落石。

私とバンドマンは先行して後輩を見守る。

「おーい、急がなくていいぞぉ。ゆっくり登ってこーい。」

そう声をかけた後、2人は気が付いた、

彼がお笑い芸人志望であるということを。

「おい!これ、フリじゃないから!
ボケのフリじゃないから!」


そう言い足したときはすでに手遅れ。

お笑い芸人志望の後輩、

富士山9合目を全力疾走。

最終的には芸人にはなれなかったが、

あの日のキミは、

日本一高いところで日本一輝いていた。


そしてついに一行は何とか頂上に到達した!

が、しかし、

閉山した富士山頂、すべての建造物は閉鎖され、

人っ子一人いねぇ

無意味にポケットに入れたまま
持ってきてしまったわたしの携帯電話、

気圧で内側から液晶画面が割れる。

そして、頂上についた感動より、

これからこの山を下山しなくてはならない事実に

ウンザリする。

「芸能人とかさ、富士山登って、頂上で感動して泣いたりしてるけど、
感動じゃなくって、単に泣けてくるよね、この状況。」

有料道路7時の門限もあることだし、何の感動もなく
早々に下山をはじめる事にする。

下山道の入り口で、追い討ち攻撃は待っていた。

『閉山のため通行禁止』

打ちっぱなしゴルフっていうのは聞いたことありますが、

登りっぱなし富士山っていうのは聞いたことありません。

私たちの決断は、もちろん

無視して下山開始。

果てしなくツヅラおりに続く下山道。

嗚呼ほんとに泣けてくる。

つづく

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富士山登頂記(5)

前倒しの閉山により、
通行禁止になっていた下山道を
無視して降りはじめた一行。

ツヅラ折に果てしなく道は続き、まったく先が見えない。

前重心での下山に足首が悲鳴をあげる。

後ろ歩きで下山して、

「おー楽だぞこれ!」とか言ってみる。

お前は小学生か。

が、一方、登りではかなり遅れをとっていた同期の女子が

超人的な速さで下山道を突き進む。

これか!これなのか!ジャージの威力は。

後に彼女は

下りのスペシャリスト

と呼ばれることになる。

いっそこのまま道をショートカットして、

転がって下山したいとか思いだす始末。

そんな無限地獄から抜け出し、普通の登山道に合流した頃には、
日も暮れてきて、体力との戦い・時間との戦いになってきた。

そのころはもう、パーティーに会話なんかないんです。

みんな無言で突き進む。

すると、うす暗闇の向こうから、人の声がする。

「すみませーん!」

立ち止まってみると、男子4人の
正しい登山ルックの若者が歩いてくる。

「なんすか?」とたずねると、

「道に迷ってしまって困ってるんです。
一緒に下山してもらっていいですか?」

と言う。ていうか、かなり必死である。

よく見ると、一人の若者がかなり衰弱している模様で、
両脇を他の2人にささえられている状態。

正しい登山ルックのクセにどこをどう彷徨ってたんだよ。

俺:「ていうか、5合目までいくんすよね?」

彷徨い人「はい。」

俺:「あとこの道まっすぐ行けば5合目だから、迷いようないけど?」

そのころはもう、他人に気を配る余裕なんてないよね。

彷徨い人:「いや、でも、お願いします!」

俺:「まぁ、ついてきたければどうぞ。」

かなり尖ってるよね、俺。

で、下山再開。

で、無言。

もうね、人のことなんてどうでもいいの、

7時までに有料道路通れるなら。

我々無職パーティーもかなり疲労していたはずなんだが、
正しい登山パーティーは更に疲労していた模様で、
だんだん2つの集団に別れてくる。

でもどう考えても1本道だし、まぁいいかと。

すると後方からまた

「すみませーん!」と声がする。

俺:
「なんすか?(キレ気味)」

彷徨い人(リーダー):
「もう少しゆっくり歩いてもらえませんか?」

俺:
「だから、この道は1本道だってば。(鬼)」

彷徨い人(衰弱者):
「俺のことは構うな。先に行ってもらってくれ…。」

彷徨い人(リーダー):
「でもお前…」

彷徨い人(衰弱者):
「俺なら大丈夫だ。」

彷徨い人(サポーター):
「ほんとうに大丈夫なのか?」

彷徨い人(衰弱者):
「ああ…」

俺:
「じゃ、お先に。」

誰が構ってられるか、

こんなB級映画の1シーンみたいな三文芝居に!


鬼畜と化した一行は5合目の駐車場に無事たどり着くことに成功。

急いで車に乗り込む。

有料道路閉鎖も回避し、やっとなごみだした車内。

「いやー大変だったねー」

「よかったねー間に合って。」

「富士山舐めたらだめだねー」

しかし、ただ一人、下りのスペシャリストだけ機嫌が悪い。

ていうか、キレてる。

「なにお前キレてんだよ?」

すると彼女は車内でこう叫んだ。

「宿の夕食の時間に間に合わないじゃない!!」

そんな理由かよ!

とりあえずみんなで無事に帰れることを喜ぼうよ…



さぁみなさん、今年の夏はみんなで富士山に登りましょう。

もちろんジーンズでね!



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