NHKFMの「朗読の世界」(月曜日〜金曜日の午後9時15分〜9時30分)で、上川隆也の朗読で髙村薫(1953年2月6日生まれ70歳)の短編集「地を這う虫」(文春文庫)の全4編を全て聞いてしまった。全35回。もちろん聞き逃してしまったものは、聞き逃し配信のらじるらじるでフォローした。以下、Amazonの内容紹介の中の辛辣なレビューを引用するが、全く同感だ。

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元警察官のセカンドライフをテーマにした4編。「愁訴の花」(警備会社勤務)、「巡り逢う人びと」(サラ金取立て屋)、「父が来た道」(国会議員の運転手)、「地を這う虫」(警備員)の4編からなる。社会の底辺で力強く生きる人間群像を期待したが、裏切られた。文章力も弱く、物語のテーマも作家の明確な意思を感じ取ることができず、全体的にぼやけているというのが印象だ。帯が連想させるような、人生を生き抜いていくメッセージはそこには無い。とくに、表題作の「地を這う虫」の出来は散々だろう。この作家のスキルは存分に発揮されているのだが、世界観が狭く、人物描写に全く深みがない(以上引用)。

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版を重ねるたびに、書き直しを繰り返している作家らしいが、プロではない証拠だろう。4編のうちのどこかは忘れたが、「反射的に」と書くべきところを「自動的に」と書いてしまっているのを聞いて笑ってしまった。とくに、「地を這う虫」の地図を塗り潰してその不思議な空き巣の関連性の伏線回収の酷さはかなりのものだ。「巡り逢う人びと」のサラ金に追われる工場経営者の異常な行動には、大笑いしてしまった。比較的聞けたのは「父が来た道」だろうか。上川隆也の朗読は、やはりまだ若すぎる感じである。