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―――お願い だれも息をしないで
『ちはやふる』末次由紀
上のセリフは冒頭で主人公である18歳の綾瀬千早(あやせちはや)がクイーン戦を賭けて勝負しているシーンで描かれている心の叫び。
それくらいこの漫画で題材となる「競技かるた」は音が重要な競技。
最初の一字が読まれた瞬間、札に伸びる手。
ここでは私たちが知っている遊びのかるたではなく、競技としてのかるたが描かれている。
かるた漫画といってもこの漫画は上の句と下の句をセットで覚えてそれを暗記していかに早く取るかだけの野暮な漫画ではない。
勿論、それは重要なことだし作中でも描かれているが、かるたに使われる百人一首は一首一首に意味がある。
そういった和歌の意味を作中で効果的に取り入れることで、日本のよさを上手く漫画で表現している。
読んでる感じは砂時計に似ているかな。
というのも冒頭が大人になった主人公から始まり、過去にあった出来事を振り返っていくスタイルに擬似感。
小学校のときに新(あらた)という千早にとってかるたの神様のような人に出会い、かるたの魅力を知った小学生編が描かれた1,2巻。
成長してもかるたへの情熱は冷めず、頂上を目指していく高校生編。
現在→過去→現在となっていく感じが砂時計と一緒ですが、逆に言えば似ているのはそれだけで描かれている内容は全く違います。
にしてもちんちくりんだった小学生時代からの千早の美人になりっぷりは異常。
でも中身はそのままなところがホッとするけど。
ちはやふるは少女マンガでも少年漫画でもないような…漫画漫画しすぎてないところが良い作品。
スポーツ漫画(競技かるたに関しては文化系よりだけど、作品を見る限りじゃこの表現がしっくりくる)って普通どこかしら漫画的なアリエナイ要素っていうのがあるけど、この漫画は本当にありえそうというか身近な感じがステキ。(千早は人よりも音を聞き取る力に優れているっていう設定は許容範囲かなぁと)
現実的な漫画って少女漫画だと恋愛要素が強いことが多くて。結構男をめぐった葛藤とか友情が描かれることが多いですよね。
もちろんそういうきゅんきゅんする感じは好きなんだけど、この作品では恋愛よりも主人公の成長や仲間の大切さとかがダイレクトに伝わってきて・・・大切なことを教えてくれています。
例えば1巻で千早が福井からの転校生、新(あらた)にミスコンに出た姉を語るシーンで「お姉ちゃんが日本一になるのが夢」と語る千早に対して「ほんなのは夢とは言わんよ 自分のことでないと夢にしたらあかん」という新。
何か胸をがしっとつかまれました。
セリフの選びが響く作品なんです。
とは言え恋愛要素もしっかりあります。
先ほども登場した千早にとってかるたの神様である新。
そして幼馴染の太一。
千早にとって太一は気の許せる男の子。太一にとっても千早は小学生の頃からずっと気になる存在。
一方、新は千早にとって尊敬する人で「かるた馬鹿」の千早にとってはずっと気になる存在。
新にとっても千早は小学校の頃、転校先で始めて心を開いた女の子で気になる存在。
太一にとっては何かにつけて「新、新」っていう千早が面白くないだろうけど、それでもそんな風にかるたが好きで、小学生の頃から変わらない千早を好きなんだろうなぁ。
新にとっても東京に来て初めて一緒にかるたをして、千早のかるたに対する情熱に触れて、ストレートに感情を表現するそんな千早が好きなんだと思う。
でも3人は恋愛の前に仲間っていう強い絆があって…これからどうなるのかが気になる。
今は太一の出番が多いので個人的には太一にぞっこんですが、これからは新の出番が増えてくるので目が離せません!
下に画像があると思いますが6巻の表紙が太一なんですけどこれがまた男前だなー。
さて、こんな感じでオススメのちはやふるなんですけども、末次由紀さんの漫画は初めて読みましたが、実は末次さんの名前は知っていました。
というのもトレース騒ぎで今までの漫画が絶版。連載打ち切りというニュースを見たからです。
その頃は末次さんを知らなかったので「あーあ、この人やっちゃったな」って思いながらも知らない人だったので、ネットで叩かれているのを見て、また制裁の厳しさから二度と業界には復帰しないと思っていました。
でもしばらくして本屋のポップで平積みで推薦されている「ちはやふる」を見て驚きました。
しかし、表紙買いするほどでもなくそのままスルーしていました。
けれど機会は直ぐにやってきました。
「漫画大賞2009」で大賞を受賞したからです。
多くの人が太鼓判を押すだけあって、読めば読むほど面白い!
すぐにこの漫画の魅力にとりつかれた私は当時のトレース事件のことを見たのですが、その辺は真っ黒すぎてフォローできません。
でも、そこで気になったのが読んだことがないのに叩いている人がいたということ。
そもそも絵が描けない私にとったら構図をまんま使ったって言われてもあんまりピンとこなくって。(まぁ著作権の問題で言ってるんだろうけど)
どちらかというと絵柄とかストーリーが重要だったりします。
だけどトレースしたからこの人の漫画は見るまでもなく駄目だって言う人もいて…絵描きにとっては許せない事件だったんだろうなぁとも思ったり。
どちらにせよ、個人的な意見ですが作者に罪はあっても作品には罪はないんじゃないかな。
やったことは許されることじゃないけど、過去の漫画も読みましたが、この人の漫画は登場人物がキラキラしてて漫画を通して伝わるメッセージって言うのがたくさんあって。
こういう作品って根が悪い人には描けないと思う。
まだ読んだことがない人は立ち読みでも何でもいいから読んでみてほしい。
一度の過ちで読者がステキな作品に出会うきっかけを逃すのはもったいないです。
それに過ちは許されることじゃないけど、失敗を挽回するチャンスって必要だと思います。
失敗して人は強くなるから。失敗して人は学ぶから。
末次さんが同じ過ちを犯さないとはいえません。
でも罰を受けたことで何か彼女の中にも残るものがあったんじゃないかな。
だから、ちはやふるみたいな作品が描けたんだと私は思います。
私のつたない文章では言いたいことの半分も伝えられないですが、この記事を読むと伝わるものがあるかもしれない。
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090325/1024920/?P=3
『08年イチオシのマンガは?ファンが選ぶ「マンガ大賞2009」』日経トレンディネット
また、ちはやふる以外にも復帰第一弾のコミックス「ハルコイ」もオススメです。
短編集なんですけど、人の優しさが詰まった作品。
うん、やっぱりこの作者は生まれ変われる気がする。
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