おわかれが
ありました。

わたしが
走り書きの手紙
(これだけでは
すこし
とても
恥ずかしくて小物置きと一緒に包んで)を
受け取っていただきました。

「ありがとう。
私もね、
あなたに顔を覚えておいて欲しくて、
写真を持って来たの」

すでに現在成人された
お孫さんが
赤ちゃんの時
この方の
膝の上で
にこにこバンザイしてる


今と変わらない
優しい気品と包み込まれるような慈愛に満ちた明るい笑顔のお若いおばあちゃまになりたての頃の
大切なひとこまを。

「ありがとう。
私は
あなたに会えて
うれしかったわ。
泣かないで。」

「それからね、
あなたが旅行にお出かけなさるとき、
ちょっと提げたりしてくれたらうれしいと思って。
私がいくつか縫ったものだから、
あなたにもらって欲しいの。
こんなもので
お恥ずかしいのだけど…」
一枚のスナップ写真。

そして、
淡い桃色と白に
ちいちゃな紅いドットと
チューリップチューリップ赤柄の
風呂敷と同じ布地を
一針ずつ縫いあげて
こしらえてくださった、
きちんと数センチの襠(まち)と、
お金の口を閉じるひもまである…手作りの巾着ぶくろ。

わたしと
あの方が
出会って
わかれた
ひみつのお品。

見るたび
瞼のはしっこから
知らないうちに
あふれるものを
こらえないでいます。

あの方のお姿や
お心のように
歳を重ねたいと
思います。