仕事後、予約を入れてあったSBC新宿近視クリニック を初めて訪れる。
ビルの7Fに構えるこのクリニック、エレベーターの扉が開くとカウンターには細身の受付レディがずらりと並んでいた。
白衣でも事務服でもなく、なんと黒のワンピースを着用しているレディ方はいずれも一目でわかる美人 ばかり。
いきなり気後れしつつも、ややウエストを絞ったタイトなシルエットをしたたかに眺めていると、「こんにちはぁ」と声をかけられた。
「…よ、予約していた者ですが」と噛み気味に告げると、「はぁ~い、ではこちらへどうぞ~」とソファーへ案内された。
ウェルカムドリンクにはピンクのドンペリでも出されそうな勢いだ。
威圧されるほど超近代的な院内は、あらゆる調度が白と黒で統一されている。まるでSF映画で見る近未来病院のようである。
清潔極まるフロアーにはチリひとつなく、壁にハメ込まれたモニターからはOCEAN BLUEのイメージビデオが流れ、傍らにはカセット型のミネラルウォータが鎮座、マガジンラックには普段絶対読まないようなオシャレ系雑誌がオシャレに並べられている。どう見てもスポニチやモンハンの攻略本は置いてなさそうだ。
やけに低いソファーに腰掛け、口を開けてキョロキョロしていると、案内係のレディからipadを手渡された。
今日の検査から手術までの流れ、料金プランから術後のケアに至るまで、このipadが動画をまじえてレクチャーすると言う。
「すげェ」以外の言葉が見つからない。
基本操作の説明を済ませるとレディは一旦退室。
初めて触るipadは薄くて軽くてかっこいい。このクリニックにぴったりのツールだと感心していると、突然大音量でムービーが始まった。どうやら持っている指がボリュームを上げてしまっているようなのだが、下げ方が全くわからない。どうしていいかわからずパニクっているところに、レディが颯爽と再登場。業務用スマイルを浮かべ、軽やかにボタンタッチ&ボリュームダウン。
爪がキラキラ光っていてキレイだった。ワンピースの黒をバックに、それは一筋の流れ星のよう。家で待つ女房子供や、親友の矢部くん にも見せてやりたいと思った。
そんなこんなで終始圧倒され気後れしつつも、検査はつつがなく終了。
昨秋のケガ の影響を心配していたが、結果は良好。問題なく手術は受けられ、1.5程度の裸眼視力を獲得できるだろうと医師から言われた。
しかもボクの角膜は普通より20%くらい厚みがあり、「これなら万が一術後に視力が落ちても十分に再手術できる」と誉められた。
よくわからないが何となく誇らしい気持ちになった。
家に帰ったら女房と子供に自慢してやろうと思った。矢部くんにも自慢したいが、彼の角膜はボクのより厚そうな気がするのでやめておこう。
手術は来週金曜日。
術後は1.5の視力でもう一度黒のワンピースを眺めようと決めた。