朝。
ケータイのない、朝。
職場に向かう電車内で目を閉じ、もう一度じっくり考えてみる。
道端に落ちているケータイを見かけた場合、人の反応には3通りあると思う。
・無視して通過。
・善意に基づいて拾う。(警察に届ける。アドレス帳から連絡を取る。etc…)
・悪意に基づいて拾う。(個人情報の悪用。ケータイの転売。etc・・・)
今回のボクの場合、やはり運悪く悪意のある誰かに拾われてしまった可能性がもっとも高い。
東京という街は恐い。
アドレス帳には幾多の人物の個人情報が詰まっている。
遠隔ロックはかけたものの、漏洩したり悪用されたりする危険性は否定できない。
また同時に、一家の家長として、緊急時に連絡が取れない状態にあることは極めてリスキーと思われた。
電車はそろそろ新宿に着こうとしている。
カッと目を見開いた。
よし、買おう。
熟考の末の決意、後悔はない。
昼休み、auショップに出向いた。
「在庫があって今日から使えて一番安いヤツ」とだけ伝え、機種は店の人に選んでもらった。
ポイントや安心サービスなどなどを駆使し、総額13000円の出費となった。
ケータイを新調すると、いつもちょっとだけテンションが上がったものだが、今回に限っては全くウキウキしなかった。
しかしもう、気持ちを切り替えるしかない。
姿を消したケータイよ、どこへ行ったか知らないが、どうか人様に迷惑をかけることなく安らかに成仏してくれ。