「森光子がヤバいことになっている。」との急報を妻から受け、緒形拳の死について語る光子の様子をさっそくTVで見た。

まさしくヤバいことになっていた。

小刻みに震える顔面とマイク、惚けたように貼りついたまま動かない表情、「ため」と呼ぶには長すぎる言葉の間、虚空に焦点を結ぶがごとく一点を見つめ続ける瞳、極端に少ないまばたき…。

静止時震振に仮面様顔貌、ラクナ梗塞にパーキンソンニズム。
そんな言葉が頭に浮かぶ。

しかしそういった細かな症状より何より、光子が全身から発する「老」のオーラというか、「危うい」感じが、普段ボクが接してる患者のそれとすでに同じだった。