1か2か。

単か複か。

One or Double。

DVDをコピーせんとする者にとって、それはあまりに重要な問題だ。

さて、薄暗いマン喫の片隅でニヤニヤしながらウーロン茶と「ドカベン」の8巻を片手に自前のPCで情報の万引きともとれる行為に耽けるトムクルーズの話。
時間的制約もあって、結局5枚のDVDを自前PCに取り込んだ。家に帰ってポンポンと焼いていく光景を思っただけで、顔がニヤける。
しかしその前にまだ仕事が残っている。配線の復旧とどけたモニターの再設置だ。気を引き締める。仕上げでミスをしてはならない。店側に迷惑をかけてはいけない。デスクトップPC・PS2・TV・DVDプレーヤーらが、全て正常に稼動することを確認し、空きグラスとドカベン8巻を所定の位置に戻して、会計を済ませる。「ありがとうございました~。」との店員さんの言葉に「フフッ、こちらこそな。」と心の中でつぶやく。改めて仕事の完璧さを噛み締めつつ、家路についた。
自宅にもどり、缶ビールを片手にPCを開く。もう安ウーロンなどではない。

そして、悲劇は起こった。

いざメディアに書き込もうとしたとき、見たこともないメッセージが画面にあらわれた。何度アクセスしても繰り返しメッセージが出てくる。
「…!?」
状況が飲み込めない。
「…一体!?」
英語で綴られるメッセージをたどたどしく読んでいくうち、衝撃の真実に気が付いた。
「そ、そんな…まさかっ」

ご存知の方も多いと思うが、DVDには「1層」のものと「2層」のものがある。中に入っている情報の量によって使い分けられており、1層のディスクは4.7GB、2層は8.5GBだ。見分け方は簡単だが、ここでは割愛する。
書き込み用のメディアは1層書き用だと1枚100円以下だが、2層用はなんと1枚1000円。だから2層書きの元DVDをコピーする際には、情報を圧縮して1層書き用メディアに収まる容量にする必要がある。(むずかしそうに思われるかもしれないが、全て専用のソフトがやってくれるので実は非常に簡単。求められるのは1層と2層の見分けだけだ。)

そう、今回ボクは元DVDが1層か2層かを確認せぬまま、PCに取り込んでしまっていたのだ。取り込んだDVDの情報量を確認すると、ことごとく8GB程度。2層DVDを圧縮せずに読み込んでしまった動かぬ証拠だ。これらを2層用メディアに焼くには5000円以上のコストが予想される。ありえない。
動かぬ証拠をつきつけられ、動けなくなるボク。
気の抜けたビールが虚しく泡を立て、全身を後悔と無念が貫く。完璧と思われた仕事に、まさかのケアレスミス。何が充実した2時間だ。何がミッションインポッシブルだ。オレはトムクルーズどころか、裸足でネコを追っかけるサザエさん以上にマヌケだ。甲子園で学帽をかぶってサードを守る岩鬼以上に滑稽だ。


…ミッションは失敗に終わった。初歩的なミスを犯し、金と時間を浪費した。ガキの使いにもならない。

最後に、今回取り込んだ元DVDがダウンタウンの「ガキの使いやあらへんで!」であったことは、何とも皮肉すぎる偶然だ。