アコースティックギターを初めて弾いたのは22のときだ。
IKKIの家に泊まらせてもらったとき、おもむろにIKKIはギターを抱き、エリッククラプトンを奏でてくれた。ものすげぇ格好よくて、IKKIに惚れ直し、アコギに一目惚れした。「オレもギターで格好つけてぇ!」と思った。
IKKIからクラプトンのスコアブックを借り、自宅に帰ると即座に1万円の激安ギターを購入し、狂ったように毎日練習した。
あの時IKKIが聴かせてくれた「ティアーズインヘブン」という曲は、ハンマリングやセーハ等、高度なテクニックが満載。今にして思えば、どう考えても初心者が最初にチャレンジする曲ではなかった。しかし「格好つけてぇ!」の一心で何度も左手の指先に血豆をつくり、約3ヶ月でマスターした。
あれから8年。
今はYAMAHAの6万円のギターを持つようになった。
しかし、
・・・レパートリーはほとんど増えていない。
というより、人前で奏でられるのはこの1曲オンリーといってもいいだろう。コード弾きはできるようになったのでリズムに合わせてジャカジャカ音を鳴らすことはできるが、アルペジオでしっかりと「聴かせる」ことができるのは、やはりこの1曲しかない。
クラプトン攻略にあれほどのめり込んだアコギだが、今ではTVをみている妻の横でたまーにつつましく音を出す程度。1曲弾き終わって、「どう?どう?」と聞くと、「あ?あーあー」という摂氏0℃の返答と、手首に力感のない冗談みたいな拍手が返ってくる。
いつか寛大がギターに興味を示しはじめたら、「どれどれ父ちゃんに貸してみろ」といっておもむろにクラプトンを弾いてやる。おぉ父ちゃんすげぇ~、と思わせてやる。その日のために、これからもつつましくたまーにギターを抱く。