JR武蔵境駅近くにある「好好(ハオハオ)」という中華料理屋。嫁一家の昔からの行きつけで、ボクも嫁の実家に行くたびにつれて行ってもらう。
店は狭くて汚くて、店長は客商売の大原則「お客様」という意識が大欠落したオヤジだけど、ここの陳麻婆豆腐は最高にうまい。
辛くて深くて甘くてシビレる至宝の美味さ。前述したこの店の欠点を全て吹き飛ばす絶品料理だ。
この陳麻婆豆腐を初めて食べたのが4年前。それ以来、ボクは麻婆豆腐の追究に余念がない。
中華料理屋に行けば必ずメインは麻婆豆腐にし、比較検討を行った。究極の目標は「好好」の味を自分で完全再現することなので、何度も鍋を振った。料理本やインターネットでレシピを熟読したり、嫁・母・姉らに意見を仰いだりした。「好好」に行って麻婆豆腐が出てきたときにはすぐに手をつけず、使用具材を確かめるため、目を皿のようにして観察した。
しかしやはり道は険しい。試作するほどに味は離れていく。どうしても再現できない。ボクが鍋を振るたびに極めてマズい麻婆豆腐みたいな食べ物が食卓にならんだ。「でもおいしいよ」と言ってくれる妻の優しさがつらい。「でも」の時点で負けなのだ。

そんな幾多の苦い戦いを繰り返す我が麻婆道に、昨日一筋の光明が射した。中国山椒「花椒」である。
中国山椒の存在は研究の過程で何度か耳にはしていた。しかし山椒など所詮は仕上げのひと振り、たいした影響などないと軽視していた。「好好」の陳麻婆豆腐には、独特の酸味に近いシビレがあり、これをボクは「ゆず由来の何か」だと目論んでいた。しかしこの風味の正体こそ、中国山椒だったのだ。
昨日はふんだんにこの「花椒」を使ってみた。するとどうだ。味は一気に「好好」に近づいたではないか。再現率60%といったところだ。感動的だった。
「花椒」を手に入れた今、今後はますます味噌のブレンドにこだわっていきたい。麻婆道はまだまだ続く。 訂正:葛西アナ→笠井アナ