以前、昭和大学の学生がウチの病院にインターン実習に来たとき、ボクがスーパーバイザーを担当した.知識的にも技術的にもまぁ平均的な学生サンで、特に大きな問題もなく、円満な実習期間を過ごさせてあげられたと思う.まじめで素直で勉強意欲もあってやさしい気持ちを持つ好青年だったから、指導に頭を悩ませることもほとんどなかった.ただひとつだけどうしてもひっかかる点があって、ボクは注意を与えた.それは彼の口癖.「すいません。」だった.
彼は何かにつけすぐに「すいません」と言う.アイサツさえロクにできない輩や、非を認めずつっぱってしまう学生もいるなかで、ちゃんと「すいません」が言えるのだから、マシと言えばマシかも知れない.ましてまわりは先輩ばかり、単身実習に乗り込んで、しかもバイザーには成績評価まで握られている.必要以上に萎縮して身を低くしてしまう気持ちも分からなくはない.とりあえず何かマズいなと思ったら「すいません」と言っておけば、確かに丸くおさまることも多い.けどボクは注意した.「すいませんって言うな」と言った.
それは、「すいません」という言葉がオールマイティーだからだ.状況判断を必要としない.ここは、「お待たせしました。」なのか「ありがとうございます。」なのか「ごめんなさい。」なのか「よろしくお願いします。」なのか.そーゆー状況に応じた言葉の使い分けをするという思考を持って欲しいと思ったからだ.
彼は人とコミュニケーションをとる上で、「すいません」という安易で万能なクリティカルパスを身につけてしまっているように感じられた.PTの場面でもよく用いられるクリティカルパスやプロトコールというものは、悪い面だけに焦点をあてて言えば「通り一辺倒」だと思う.けどそこに表裏一体としてある利便性やメリットが非常に有効だから、多くの病院で導入され続けているのであろう.
が、やはり患者は一様ではない.通り一辺倒な思考で対処できるものでは決してない.
・・・と学生に指導したら、「すいません、わかりました。あっ!またすいませんって言っちゃいましたすいません!あっ!!」といった.本当にまじめで素直な好青年だった.