何か妖怪? 4  「黒塚の鬼女」 | みつ光男的 だれだれ日記

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家族と過ごす何気ない日常と好きな音楽、プロレス、自作小説について。
更には日々の癒しとなるアイドルについてなども長ったらしく綴ります。

今回の妖怪シリーズ、かなり怖いです。

「陸奥の安達ヶ原の黒塚に鬼こもれると聞くはまことか」
そう平兼盛が詠んだのは、福島県は二本松市の安達ヶ原

この地には能の演目にもなっている「黒塚の鬼女」の伝説があります。

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大昔、ある僧が旅の途中、安達ヶ原を通りかかったところで
すっかり日が暮れてしまいます。
当時の安達ヶ原は荒れ果てた野原で、
宿はおろか身を休めるような小屋さえも無いという有様。
それでも僧は、遠くに灯りのともる岩屋を見つけ、
そこに、その夜の宿を求めます。

岩屋から現れたのは、痩身に白髪を振り乱した老婆。
彼女は僧を快く岩屋へ招き入れるが、
外で出る時に「留守の間、決して奥の間を覗いてはいけない」と忠告。

「見るな」と言われると見てしまうのが人の性。
僧が奥の間を覗いてみると、山のように累々と積まれた白骨や髑髏、
中には人の手足や内臓の飛び散った形跡も見られる。

「さてはあの女、人を喰らう鬼婆か」
僧は必死で岩屋を飛び出すと、それを察した老婆が
鬼女の姿となり、凄まじい速さで追いかけてくる。

もはやこれまでと思いながらも必死でお経を唱えると
突如雷鳴が鳴り響き、鬼女はそれに打たれて絶命。

その後、鬼女の亡骸は、阿武隈河のほとりに埋葬され、
その場所を「黒塚」を呼ぶようになった…

と、ここまで聞けば、「鵺」や「悪路王」、「九尾の狐」と言った
普通の妖怪退治譚とさほど変わらないのですが、
この話をここまで大きく悲劇的な物語にしたのは、
より深い「悲しみのエピソード」が隠されているからに他ならないのです…

鬼女になった女性は元は名を「岩手」といい、
京都の公家の屋敷で乳母をしていたのだそうですが、
岩手が可愛がっていた姫は生まれながらにして奇病を患い、
5歳になっても口が聞けませんでした。

岩手はある占い師の
「妊婦の腹にいる胎児の生き胆を食べさせれば治る」
その言葉を盲目的に信じ込み、生まれたばかりの実の娘を残して旅に出ます。
そして京から遠く離れた奥州安達ヶ原の岩屋でその時を待つのです。

長い年月が過ぎ、ようやく訪れた若い夫婦。
よく見れば婦人は妊婦でした。
腹痛を訴えた婦人のために夫が薬を買いに出た、その隙に
千客万来とばかりに、出刃包丁を振りかざし
婦人の腹を切り裂く岩手。

そして胎児の生き胆を取りだした時、
ふと婦人が首から提げていたお守りを見つけます。
それは、岩手が京を去る時に、愛娘にかけてあげたお守り…

岩手が腹を掻き裁き、胎児を取りだした女性は…
そう、岩手の実の娘だったのです…

その出来事がきっかけで岩手は発狂して鬼となり、
その日以来、岩屋を訪れる旅人に刃を立てては、
その肉を喰らい血をすするようになったのです…

一説では僧が観音の力を借り、悪念を塚に閉じ込めたという説もあります。
残念ながら、僕は能の演目を鑑賞した事はないのですが、
機会があれば一度見てみたいものです。

その「黒塚」伝説を歌にしたのが我らが妖怪ヘビーメタルバンド、
陰陽座
初期の名曲である『「組曲」黒塚』
「安達ヶ原の鬼女伝説」を体現した楽曲で、正直、身の毛もよだつ恐ろしさ。
特にVo.の猫さんの語りは、まるで鬼女に取り憑かれたかのようなリアリティに溢れ、
夜道でこの曲を聴く事はあまりお薦めできません(笑)

前もって一言、心臓の悪い方は決して一人では観ないでください(笑)



(映像をお借りしました、ありがとうございます)

歪んだ愛が招いた悲劇と言うには、あまりにも悲しい物語。

命果てようとした岩手の娘は死に際に何を思ったのか…
そしてわが子を手にかけ、実の孫の生き胆さえも奪ってしまった、
岩手の心境は察するに余りあります。

そして僕はこの物語に何を感じるべきなのか…
愛の形って難しいものですね。

さあ、愛を探しに行きましょう(笑)

【追記】
少し昔の漫画なのですが「ミスター味っ子」などで知られる
寺沢大介先生の「WARASHI」という妖怪漫画にも
「黒塚の鬼女」が登場します。
全4巻、古本屋などなら割と入手しやすいと思うので、興味のある方はどうぞ。
$みつ光男的 だれだれ日記-まんが

但し、少年誌の漫画にしては内容はかなりグロいです…