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とにかく早く忘れたかったのだ。
そして2人のことを、真実を、想いを封印してしまった。
ずっと忘れられるはずだった。
美優は自分の家の電話番号を教えてはいなかった。
それから2人は会うこともなく長いような短いような40年の月日がただ過ぎたのだった。
封印が解けた今、電話を1度だけの理由がしばらく思い出せなかった。
こんな思いをして封印すれば無理もない。
それどころかあの決断をしたのも本当は電話の前だったのではないか…
なんてことを…若いということは残酷なほど恐れを知らない。
電話は1度しかしなかったけれど聞いていた就職先のアパレル関係のお店には何年も何度となく足を運んだ。
支店も職種もわからないのに逢えるはずもなく。
封印したはずなのに矛盾しているが事実そうだったのだ。
君といつまでもがテレビから流れてくるたびに胸がチクっと痛んだ。
それでもそれほど強烈でもなく忘れられていた。
それなのに去年の暮れにあの歌がこれまでになく流れた。
それでもギリギリ大丈夫だった。
その記憶も薄れてきていた年明けのある日、斗真くんのCMを見て衝撃的なあの場面が強烈に蘇ってしまった。
それからというもの毎日毎日心が苦しくて言うことをきかなかった。
あの場面がフラッシュバックする。
今は少し落ち着いてきてはいるが波があるにはある…
何をしても頭から離れない。
身体を動かしても夢中で何かしても心が楽になりそうな記事を散々目にしても。
もうこのままずっと一緒なのだろうか。
誤解を伝えなかった後悔と苦しさと好きだった想い。
そして今、直接関係はないがCMで映画音楽sunflowerが切なく流れてなんとも心を乱すことが起きるのだろうか。
あの人に倫也にあの日の事をどんな形でさえいいから全部伝えたい。
誤解だということを。
もう忘れただろうか、恨んでいるだろうか。
傷つけてしまったよね、ごめんなさい。
誤解を解くことが出来なくても今更迷惑だろうという思いもあるけれど伝えたい伝えたいごめんなさい。
早ければ20代でも終活をする時代。
天が私に与えた終活の一環なのか。
またあの頃に恋してる…たとえ恨まれていても。
倫也も結婚して幸せに暮らしてるだろうか。
美優も結婚してまあ普通には暮らしている。
一言でも言葉を交わしてみたいという想いもあるが…
一瞬でも2人の時間が重なったなら…
誤解が生じたら解く努力をする事と40年も経って思い知らされるなんて。
幸せに暮らしていてね…
…苦しいな。
もう少し時間が経てば大丈夫かな
宇宙みたいな広い心が欲しい。
もし心が宇宙だったら素敵だろうな。
太陽があって地球があって月があって
幾千の星々が輝いて…
ま 厳しいことも多い、自然は。
それでもみんな包み込んでしまう心が欲しい。
この想い全部届けあなたへ、そしてそれぞれの場所へと。
ニヒルな笑顔が素敵だった
だいすきだった
いつも心の隅に隠れていた人
ラベンダーの花がまた香りはじめる
〜倫也、あなたが大好きだった
もっともっと一緒に居たかった〜
完