どうやったらそんな気の効いた言い回しが出来るんだ???
ん?なんか聞いたことがあるぞ・・・
そのフレーズ・・・なんだっけ???
記憶に擦り込まれていることだけは間違いないが、
それがいつ?どうやって?どこから?入り込んだのかが思い出せない。
とにかく、気になる言葉の出所が思い出せない。
12月も残りわずかな早朝、
まさに年末を現すような、ベランダ越しに「パンパン・・・」と
カーペットらしきものを叩く音で目覚める。
普通なら文句の一つも言いたいところだが
その騒音の発信者は敬愛するお隣りの老夫婦。
その相も変わらず仲睦まじき光景を見る度に、
こんな私でも心が温まるものだから
ギスギスしたご近所関係は決して望んでいない。
むしろ、この2人に何かあれば私が何とかしてあげよう!と少しだけ思ってたり。
通りすがりの猫は言った。
「何???こんな早くから・・・。ちょっと非常識なんじゃない???」
それを受けて同意の言葉を発するべきだったが正直な私。
「いや!決して非常識ってわけじゃ~ない。」
「そういうシーズンだし、お隣りは普通にカワイイ老夫婦じゃ」
逆に『非常識』という言葉を用いる猫に対し、
「キミの常識って何?」と問いたくなる私。
ただ、
こういう何ともない言葉のやりとりで敵or味方がはっきりするようで。
状況を考えれば
老夫婦を弁護する私に対し「えっ?なぜ?」という懐疑心を持つのが自然。
その猫にしてみれば違和感しか残らないだろう。
猫には罪は無い。
案の定、私を敵と認識した猫は午前中には姿を消す。
いつも通りの一人に戻った頃
今度は玄関先の共有廊下から何かを引き摺り出す音。
延々とその摩擦音と、途中、壁にぶつける様な音がする。
興味本位に覗き穴に眼をやると
予想通り老夫婦が壊れかけたタンスを運び出している。
気の効いた隣人は
高齢者には無条件で親切な隣人は
イイ人と思われたい隣人は
これを見て知らん顔はできないわけで・・・。
「オバちゃん!おはよ!」
「もしかして、もう大掃除かいね?」
「ごめんね~朝からうるさかったじゃろ?」
「やめんさい。って主人に言うのに聞かんのよ」
「気にせんでええよ!」
まさか、お隣り老夫婦に対し
「釣った魚が逃げたじゃろ~が!!」「餌付け途中の猫が逃げたじゃろ~が」
なんて不条理な言葉を吐く訳にもいかない。
当たり前のように粗大ゴミ置き場にその古びたタンスを運び出し、
居住フロアの上がって来る頃
「朝ご飯まだなんでしょ?」
「ウチはお昼じゃけど一緒に食べんさい。」
最近の私はこの老夫婦に遠慮と言う意識を欠いている。
まだまだ“いいとも”も始まらない時間から
当たり前のように老夫婦ダンナから薦められる得意ではない日本酒を
ありがたく頂戴する。
その傍らで老夫婦奥方は
撤去したタンスのおかげで広々とした和室に雑巾がけをしながら言う。
「まだまだ1年ちょっとなのにね~」
「タンスを置いていた畳の色がそこだけ若いわね~」
畳の色が若い。
その表現力に魅了された。
この婆さんったら、どんだけシャレオツなこと言うんや!!!
そのフレーズ・・・記憶に有るような無いような???
あの日からほぼ一カ月・・・
ず~~っと引っ掛かってた・・・
婆さんの言葉の綺麗な言い回しの意味がようやく解けた。
「タンスを置いてた畳の色がそこだけ若いわね~」
↓
「畳の色がそこだけ若いわね~」
↓
畳の色がそこだけ若いわ~~
こんなことも思い出せない自分自身のクオリティーの低さが
嘆かわしいと同時に、言葉の“裏”の意味を知った。
『若い』とは
陽の光を浴びて成長するわけでも無く
冬の風に耐えて力強くなるわけでも無く
変わらない環境下で成長してない様。
オレの事なのか????